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The Storm Chaser

  
カテゴリー「局地 気象現象」の記事一覧

内陸性気候と放射冷却

2014年1月7日、今朝は冷え込みました。地元茨城県筑西市で-7.5℃、隣接する栃木県真岡市で-8.8℃、茨城県つくば市で-7.1℃、茨城県市下妻市で-7.0℃、茨城県龍ケ崎市で-7.4℃と、この冬一番の冷え込みになりました。栃木県南東部から茨城県南西部は、関東平野で最も冷え込む場所として知られています。過去の記録から、1952年2月5日につくば市で-17.0℃、1984年1月20日に龍ケ崎市で-15.5℃、2000年以降も真岡市、筑西市、下妻市で-10℃以下を観測しています。

このあたりは内陸性気候で、夜間に風がないと放射冷却が起こりやすくなります。放射冷却とは、晩秋から早春頃、晴れて風のない夜から明け方頃に地表面の熱が放射されて気温が下がる現象です。放射冷却が起こると、筑波山麓の西斜面では地表の熱が冷やされて発生する霧、放射霧が見られることもあります(下の写真参照、2011年11月23日撮影)。

*関東の平野部のみが対象で、山間部は除外してあります。お間違いの無いようにお願いします。

放射霧

接地逆転層により、地表付近に閉じ込められた放射霧。© Yutaka Aoki. All rights reserved.



夕方以降は雲が多くなり、日没間際には放射状の巻雲が見られました。一部で地震の前触れなどと噂されていますが、あくまで噂であり関連を裏付ける科学的根拠はありません。放射状巻雲は天気が崩れる前触れで、雨が近いことを表しています(2014年1月7日撮影)。

夕日

放射状巻雲

夕日と放射状巻雲、空いっぱいに広がる巻雲は雨の前兆。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

可視化した温暖前線

回転する上昇気流域、メソサイクロンを伴う単一セルの積乱雲をスーパーセルと呼びます。単一セル内に上昇気流と下降気流、独立した二つの循環系を持つため効率よく対流が行われ、凄まじいパワーと持続性を兼ね備えています。

降水域(下降気流域)と無降水域(上昇気流域)の境目には温度差で発生する壁雲(ウォールクラウド)が地上に向かって降りてきます。壁雲は舞台と客席を仕切る幕のように垂れ下がり、反時計回りの回転を伴います。高湿度の条件下では、壁雲から降水域(下降気流域)に向かって伸びるテーパー状の雲、テイルクラウドが発生することがあります。テイルクラウドの発生は気流の乱れを表すものであり、断片雲が激しく上下動を繰り返す場合、突風などの激しい現象が発生する恐れがあります(2011年7月5日、茨城県西部で撮影)。

スーパーセル

図解スーパーセル

降水域に伸びるテーパー状の雲がテイルクラウドだ。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

冷気外出流により、局地的に現れる寒冷前線(ガストフロント)が可視化することはよくありますが、ごく稀に、壁雲の上から無降水域(上昇気流域)に向かって、水平方向に伸びる雲列が見られることがあります。ビーバーテイル(Beaver('s) Tail / ビーバーの尻尾)と呼ばれる雲で、局地的な温暖前線が可視化した姿です。竜巻や漏斗雲以上に珍しい現象で、私もこれほど鮮明に現れたビーバーテイルは、一度しか見たことがありません。なお、ビーバーテイルはストームチェイサーのスラングであり、気象用語ではありませんのでご注意下さい。

ビーバーテイル

図解ビーバーテイル

画面奥から右側に伸びているのがビーバーテイルだ。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

塵旋風 - Dust Devil

風塵と並ぶ春の風物詩、塵旋風(じんせんぷう)です。別称はつむじ風、英語ではDust Devil(ダストデビル)と呼ばれます。塵旋風は地表付近で発生する上昇気流の渦で、強い水平風が加わると上空数10mまで立ち上がることがあります。小規模のものは日常生活の中でも良く見かけ、塵や埃、落ち葉などを巻き上げることで可視化します。突風の一種として分類されていますが、強度的にはF0以下で、大きな被害を出すことは稀です。



運動会中に塵旋風が発生する映像が度々発信されていますが、学校のグランドは周りを校舎や住宅に囲まれ、そこだけが開けているところが多いため、塵旋風が発生しやすい環境と言われています。テントの巻き上げに関しては、あの形状から上昇気流に対しては無力であり、パイプを地面に打ち込んだり重りを付けたとしても、防ぎ用がないそうです。

dust devil

塵旋風

麦畑で発生した塵旋風、土煙を上げながら回転している。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

規模の大きなものは土煙を上げて数10mまで立ち上がるため、竜巻と間違われることが多々あります。竜巻とは発生のメカニズムが違い、塵旋風は晴れていても発生します。また、ビル風などの環境風で発生することもあり、都市部でも起こりうる現象です。

旋風には昇温+水平風で発生する塵旋風、ガストフロントの上昇気流で発生するガストネード、炎の熱で発生する火災旋風などがあります。その中で最も怖いのが火災旋風です。大規模な火災や山火事で発生することが多く、旋風の温度は1000℃を超えます。関東大震災や東京大空襲、阪神大震災で大規模な火災が発生した長田区でも発生が確認されています。

火災旋風

強烈な風切り音とともに発生した、竜巻状の火災旋風。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

上の写真は渡良瀬遊水地の葦焼きで発生した火災旋風です。私は風上の栃木県側で撮影していましたが、風下の埼玉県側で撮影していた人の話では、煙と熱風に巻かれて生きた心地がしなかったそうです。当日は、強風の影響で予定していたよりも広範囲に燃え広がり、遊水地の外にある物置小屋が焼ける被害も出ています。

*関連記事・・・炎の上昇気流 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/72/
*関連記事・・・ビルの谷間でつむじ風 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/56/

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

写真家・青木豊

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