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The Storm Chaser

  

2012年9月4日の落雷と一陣の風

2012年9月4日、上空の寒気の影響で北関東で激しい雷雨になりました。栃木県北部で発生した雨雲が発達・組織化しながら南下、茨城県では夕方から雷雨になり、17時過ぎには、茨城、栃木、群馬、千葉、埼玉、各県に竜巻注意情報が発表されました。追跡中、降雹、落雷、ガストフロントを確認しています。積乱雲が接近する様子を撮影していたところ、ガストフロントの発生を確認、16時50分~17時10分頃に掛けて筑西市南部で撮影した動画です。等倍速では長過ぎるため、16倍速で編集しています。



ガストフロントが通過する様子を動画(16X)でとらえた。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

ガストフロントの発生する範囲は局地的で、短時間のうちに終息します。発生からの一部始終を見ていましたが、20分程で終息しました。ガストフロント周辺の気流は不安定で、稀に竜巻や突風性の旋風(ガストネード)が発生することがありますが、多くの場合は通過時に強風を伴う程度で、大きな被害が出ることは稀です。それほど珍しい現象ではなく、激しい雷雨が長時間続く時などに良く見られます。当日の筑西市の気温は、16時が31℃、17時が26.2℃、18時が22℃、2時間で9℃急降下しています。風向きは16時は南東方向、17時には北西方向、17時30分には北東方向、18時は南東方向に変わっています。ガストフロント通過時の瞬間最大風速は、17時に11.5m/s、17時10分に11m/sでした。11.5m/sと言うと大したことないように思いますが、一般的に風速10m/sを超えると傘が壊れ、風に向かって歩くことが困難になると言われています。

ガストフロント

6枚の画像を合成したパノラマ画像。クリックで長辺1200ピクセル表示。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

ガストフロントは強い下降気流(吹き下ろしの冷たい風)により生じるため、突風前線・陣風前線とも呼ばれています。19世紀末頃(明治時代中期頃)には、強風域が線状に移動する状態を陣風線と呼んでいたそうで、ガストフロントのことであると推測できます。また、太平洋戦争中期には陣風と言う名の戦闘機が試作されています。陣風の如く空を翔け抜ける、そんなイメージで付けられた機名なのでしょう。

アーチ雲

にわかに暗雲がたちこめ一陣の風が吹き抜ける、ガストフロント通過の様子。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

雲の中心を避けながら更に追跡を続けます。中心部は雨と落雷が激しく撮影困難なため、中心部を避けるように移動を繰り返します。移動中に防災無線より竜巻注意情報のアナウンスが聞こえ、にわかに緊張が走ります。ギリギリで降雨域に掛かる場所から静止画と動画、2台体制で撮影を続けました。静止画は1/60秒を確保するためISO1250で撮影していますので、少々ノイジーです。

対地雷

車内から手持ちで撮影した対地雷。雷撮影は細心の注意が必要。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

撮影データをバックアップするため一度帰宅しましたが、自宅周辺は道路が乾いていて雨は全く降っていませんでした。撮影場所から家までは数キロで、局地的な雷雨だったことがわかります。

雲間雷

雲底をはうように広がる雲間雷、写真的には対地雷より面白い。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

完全に日が落ちた後は自宅周辺で雲間雷をバルブ撮影しました。夜の雷撮影は花火と同じ要領ですので、難しいことはありません。安全面を最優先に考えた場所でチャレンジしてください。19時前には切り上げましたが、その後雨が降り出し、20時過ぎまで稲妻が光っていました。

*関連記事 「ガストフロントに迫る」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/43/
*関連記事 「ガストフロント - Gust Front」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/7/
*ガストフロントの微速度映像 http://youtu.be/khnU4iSGX-A (2010年6月28日撮影)。

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

ガストフロントに迫る

2012年8月6日午前11時30分頃、新潟県新潟市および五泉市でガストフロントによる突風被害が発生しました。強度はF1、被害幅19Km、被害長34Km、樹木やコンクリート製の電柱が倒れる被害が出ています。ガストフロントによる突風被害では国内最大級ではないかと思います。

2012年8月6日 新潟県新潟市・五泉市 負傷者5名 住宅半壊1戸 F1(ガストフロント)

ガストフロント

上の写真は2011年8月に茨城県南西部で発生したガストフロント。新潟の突風被害とは無関係。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

ガストフロントは突風前線・陣風前線とも呼ばれ、成熟・衰退期の積乱雲から生じる吹き下ろしの冷たい風(冷気外出流・下降気流)と周辺の暖かな空気が衝突することで発生する局地的な寒冷前線です。前線最前面には、手が届きそうな低い位置にアーチ状の(緩やかな弧を描くような)雲が現れます。発生は局地的で、冷たい風の供給元である積乱雲の衰退とともに消滅します。通過時には台風並みの突風を伴うことがありますが、国内で発生するガストフロントのほとんどはF0以下で、大きな被害を出すことは稀です。

アーチ雲

前線面に発生するアーチ雲(Arcus)、対流活動が活発な時に発生しやすい。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

2011年8月11日、茨城県南部で雨雲が発達し石岡市柿岡で115mm/hの猛烈な雨を観測、茨城県南西部ではガストフロントが発生し、激しい雷雨になっています。低い位置に垂れ込めるアーチ雲は、まるでアーケードの屋根のように見えます。

アーチ雲

強い下降気流が持続することでガストフロントが発生する。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

こちらはアーチ雲を下から捉えた画像です。アーチ雲通過時には一時的に雨が強まったり、落雷や突風が吹く恐れがあります。観測には細心の注意が必要です(危険なのでお勧めしません・・)。上の写真は、安全な場所に駐車し車内より撮影しています。

ガストフロント

2010年6月28日、茨城県筑西市で発生したガストフロント。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

青い矢印は下降気流による冷たい風(重い)、赤い矢印は上昇気流による暖かな風(軽い)、気流の衝突したところに局地的な寒冷前線が発生します。ガストフロントによる上昇気流に渦が生じると、ガストネード(Gustnado)が発生することがあります。積乱雲の下で生じますが、発生のメカニズムは竜巻よりも塵旋風に近く、見た目も塵旋風に似ています。強度的には塵旋風以上竜巻未満といったところでしょうか。



*ガストフロントの微速度映像 http://youtu.be/khnU4iSGX-A (2010年6月28日撮影)
*関連記事 「ガストフロント - Gust Front」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/7/

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

2012年8月17日の豪雨

2012年8月17日、上空の寒気と南からの暖湿流の影響により、広い範囲で大気が不安定となり、午後を中心に激しい雷雨になりました。地元茨城県筑西市では、昼前より県北方面および栃木県北部方面にかなとこ雲が見えていました。午後になると複数の積乱雲が組織化して南下してきました。筑西市では13時台より雷鳴が聞こえ、14時7分には茨城県に竜巻注意情報が発表されました。

降水雲

筑西市南部より見た降水雲と筑波山、雲の下は土砂降りだ。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

当日、筑西市南部にて撮影中でしたが、予測よりもやや西に動いていたため市街地方面に向かい追跡中、ダウンバーストと思われる突風に遭遇しました(14時25分頃)。それまで真上から落ちていた雨が突然真横から叩きつけるように降ってきて、一瞬にして視界は真っ白、道路にビールケースや木の枝が転がっていました。大瓶用のビールケースはそれなりの重さがあるため、10m/s前後の風では飛ばされないはずです。直前には降雹も確認、真横から叩きつけるような風が吹いたため、ダウンバーストと推測します。96年の下館のダウンバースト時(F1~F2)も運転中に遭遇しましたが、今回と同じように一瞬にして真っ白になり、視界を奪われました。勿論、風の強さは今回の比ではありません。

下降気流

バケツの底が抜けたように雲底から一気に落ちてくる雨。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

前を走るトラックのテールランプを頼りに、何とか駐車できる場所まで移動し、車内から動画を撮影しました。最も激しかった時に比べると風も弱まっていますが、それでも車がガタガタ揺れるくらいの風でした。雨も凄まじく、息苦しさを感じる程でした。12時過ぎの時点でで33.9℃だった気温が、13時台には26.7℃、最も激しい風雨だった14時台のデータは14時10分に25.1℃を観測して以降、15時30分まで欠落(通信不良?)、15時台には26.1℃と急降下しています。風向きも12時の時点では南寄りでしたが、13時以降は北寄りに変わっています。瞬間最大風速は、14時10分に13m/sを観測して以降、15時30分まで欠落しています。

竜巻と違い、F0クラスのダウンバーストやガストフロント、熱雷による突風は、年間かなりの数が発生しています。目立った被害がなければ気象庁のデータベースにも掲載されないため、年間どれくらい発生しているのか、正確な数はわかりません。最近の傾向として、より局地的で狭い範囲に限定された突風が増えています。



突風により真横から叩きつける雨。数分で終息した。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

ダウンバーストは竜巻研究の第一人者「藤田哲也教授」により1974年に発見された局地現象です。海で発生した場合「白い嵐(White Squall)」と呼ばれ、1961年5月にメキシコ湾で帆船アルバトロス号が沈没、生還した船員の手記を元に映画化されています。61年当時、ダウンバーストはまだ解明されておらず、船乗り達から白い嵐と呼ばれ恐れられていました。

*藤田哲也 1920年-1998年 シカゴ大学名誉教授、竜巻・ダウンバースト研究の世界的権威。
*関連記事 「ダウンバースト - Downburst」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/9/

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

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