2011年4月25日から28日に掛けて、アメリカ南部で大規模な竜巻被害が発生しました。多くの犠牲者が出た上、原発の損傷も出ています。4月25日から28日までの4日間に400個を超える竜巻が発生し、史上二番目の大きな被害が出ています。2011年5月22日夜には、中西部ミズーリ州ジョプリンで大規模な竜巻被害が発生しています。竜巻の強度はEF5と見られ、単独の竜巻としては米国史上最悪の犠牲者を出しています。4月の竜巻発生数は875件だそうで、わずか1ヶ月で年間発生数に達しことになります。
全世界で発生する竜巻のうち約8割(800~1,000個)はアメリカで発生し、4月~7月頃に集中しています。その中でもアメリカ中西部と南部内陸部で発生頻度が高くなっています。東西をアパラチア山脈とロッキー山脈に囲まれ、メキシコ湾からの暖気とカナダからの寒気がぶつかり、大気の状態が非常に不安定になりやすい地域です。俗にトルネード街道と呼ばれるのは次の州で、オクラホマ、カンザス、テキサス、ネブラスカ、ミズーリ、イリノイ、アイオワ、アーカンソー、ルイジアナ、ミシシッピ、アラバマ、フロリダ、サウスダコタとコロラドの一部も含まれます。逆にロッキー山脈の西側ではほとんど竜巻が発生しておらず、アメリカ西海岸では一生に一度も竜巻を見ない人が沢山います。
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National Geographic / Joplin, Missouri, Tornado Pictures(外部リンク)
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F5 and EF5 Tornadoes of the United States(外部リンク)
ウォールクラウド。写真はイメージであり、日本で撮影。© Yutaka Aoki. All rights reserved.
映画「オズの魔法使い」で、主人公のドロシーが竜巻に遭ったのはカンザス州の農場でした。グレートプレーンズと呼ばれるアメリカ中西部に広がる大平原、この辺りは世界でも有数の穀倉地帯であり、トウモロコシ、大豆、小麦などが有名です。カンザス洲はアメリカ国内における田舎の代表格で、多くのアメリカ人は「トウモロコシと竜巻」を思い浮かべるのだとか。それもそのはず、カンザス州はアメリカ国内でも竜巻の発生数がずば抜けて多い地域で、カンザス州も含めた周辺地域はトルネードアレイと呼ばれています。カンザス洲、ネブラスカ州、オクラホマ州、テキサス州、この地域を拠点に活動しているストームチェイサーも多く、竜巻見学ツアーが開催されているのもこの地域です。
ストームチェイサーの人間模様を描いた映画「ツイスター」に登場する、竜巻観測装置の名称がドロシーでした。劇中に登場するワキタ(Wakita)は、オクラホマ州グラント郡の小さな街です。ワキタには
ツイスターミュージアムがあり、劇中に登場した観測装置ドロシーも展示されているようです(HPのMuseum Tourで見られます)。
発達した積乱雲。写真はイメージであり、日本で撮影。© Yutaka Aoki. All rights reserved.
*1950年から2009年までの統計(アメリカ国立気候データセンター)を元にした竜巻発生数。
■ 1位 テキサス州 8049個
■ 2位 カンザス州 3809個
■ 3位 オクラホマ州 3442個
■ 4位 フロリダ州 3032個
■ 5位 ネブラスカ州 2595個
■ 6位 アイオワ州 2368個
■ 7位 イリノイ州 2207個
■ 8位 ミズーリ州 2119個
■ 9位 ミシシッピ州 1972個
■ 10位 アラバマ州 1844個
竜巻の強度を分類する藤田スケールの最上位はF5ですが、1999年5月3日、オクラホマ州ブリッジクリークで非公式ながら最大風速142m/s(F6)の竜巻が観測されています(99年当時は従来型のFスケールが採用されていたため、Fスケール表示です)。
2013年5月15日、テキサス州北部で少なくとも13個の竜巻が発生し、多数の死傷者、行方不明者が出ています。被害が大きかったグランベリーでは、住宅の倒壊や車が飛ばされる被害が出ています。竜巻の強さはEF4に相当すると見られています。5月19日には、オクラホマ州、カンザス州、イリノイ州、アイオワ州で26個の竜巻が発生し、多数の死傷者が出ています。オクラホマ州とカンザス州の被害が特に大きく、大規模な停電、住宅の倒壊、18輪トレーラーが吹き飛ばされる被害も出ています。5月20日にも直径3kmを越える大規模な竜巻が発生し、児童を含む多数の死傷者、行方不明者が出ています。オクラホマ州オクラホマシティー南郊のムーア市では小学校が倒壊、竜巻の強さはEF5に相当すると見られています。アメリカでは4月から7月に竜巻が集中していますが、過去20年の統計では、5月に最も多く発生しています。
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Tornado Alley / Tornado Activity In The United Stars 1950-1998(外部リンク)
竜巻の前兆、漏斗雲。写真はイメージであり、日本で撮影。© Yutaka Aoki. All rights reserved.
世界規模で見ると中緯度の地域で竜巻の発生が多く、アメリカ、インド、イギリスが竜巻発生数のベスト3です。日本では年間約20個の竜巻が発生していますが、その多くはF0~F1で、過去最大級はF3です。過去に国内でF3の竜巻が発生したのは、千葉県茂原市、愛知県豊橋市、北海道佐呂間町、茨城県つくば市の4ヶ所です。
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