複数の降水セルで構成された積乱雲群のことで、新旧交代をしながら長時間持続、大雨を降らせます。個々のセルは組織化され、発生・発達・成熟・衰退を繰り返します。衰退期のセルから噴出す下降気流と暖かな空気が衝突し、新たなセル(ガストフロント)を形成します。5月~9月頃に発生することが多く、長時間の大雨、同時多発的な集中豪雨が発生しています。ダウンバーストや竜巻などの局地現象を伴うことも多く、突風、雷、雹にも注意が必要です。水はけの悪い都市では、道路の冠水、地下道・地下鉄が冠水するなど、都市型洪水が発生しています。
*降水セル、セル、ストームセル・・・雨雲・低気圧を構成する空気の塊。
*ガストフロント・・・突風前線、気流の衝突により発生する局地的な寒冷前線。上昇気流を伴う。
2009年7月27日 前線の南側で同時多発的な集中豪雨が発生。
© Yutaka Aoki. All rights reserved.この日、前線南側に位置する、関東、東北南部、東海地方で同時多発的に集中豪雨が発生しています。浜松市で82mm/hの雨、仙台市で55.5mm/hの雨、館林市でF1~F2の竜巻が発生しました。
*マルチセルの種類
・クラウドクラスター・・・組織化された複数のセルが新旧交代をしながら長時間持続する積乱雲群。これらの雲がひとつにまとまり、渦を巻くようになると熱帯低気圧・台風になる。
・スコールライン・・・寒冷前線の進行方向に向かって平行に並ぶ(新旧交代を繰り返す)積乱雲群。衰退期の積乱雲から噴出す下降気流からガストフロントが発生し、積乱雲が線上に並ぶ。
・バックビルディング・・・積乱雲の風上に次々に新たなセルが発生し、長時間の集中豪雨をもたらす。同じ場所で大雨が持続するため、災害を引き起こす可能性が高い。
2009年7月27日14時頃に群馬県館林市で発生した竜巻は、マルチセルにより発生しています。気象庁のドップラーレーダーによる観測では、ガストフロントの存在と複数の渦も確認されており、ガストフロント上に発生した渦が竜巻本体と見られています。
2009年7月27日 館林市方面に南北に連なる積乱雲が発生。
© Yutaka Aoki. All rights reserved.2009年7月27日14時頃、群馬県館林市方面に南北に連なる巨大な積乱雲を目視で確認しています。写真奥にかなとこ状の積乱雲があり、埼玉県~群馬県~栃木県を跨ぐかたちで見えていました。その後、カーラジオで突風発生の一報を聞き、写真の積乱雲が原因と知った次第です。観測地の茨城県筑西市から群馬県館林市までは、約50kmの距離です。
*関連記事 「ダウンバースト - Downburst」
http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/9/*関連時期 「ガストフロント - Gust Front」
http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/7/*関連記事 「漏斗雲 - Funnel Cloud」
http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/6/*関連記事 「国内最大級はF3」
http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/2/*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。