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The Storm Chaser

  
カテゴリー「追跡レポート」の記事一覧

2012年9月6日の雷雨

2012年9月6日、気圧の谷が通過した影響で午前中は北陸地方で、午後は関東地方で激しい雷雨になりました。茨城県南西部では14時頃から雷鳴が聞こえ、14時30分頃には稲妻がハッキリと確認できました。北西方向が見渡せる観測地に向うと、墨流しのような雲が勢い良く流れてきます。冷気外出流により冷たい風が吹き荒れ、周囲は埃が舞い上がり騒がしくなってきました。

*墨流し・・・墨汁を水に流した際に出来る模様・マーブル模様。

雷雲

怪しい雲が接近し、吹き下ろしの冷たい風が吹いてきた。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

15時16分には茨城県に竜巻注意情報が発表されました。吹き荒れる強風と広範囲に落ちる雷、ただならぬ雰囲気に圧倒され、車内からの撮影に切り替えました。わずかに開けた窓の隙間からレンズを出し、落雷の様子を捉えました。その後、雨脚が強まったため、近くにある道の駅の展望スペースへ移動し、ソファーに腰掛けて外の様子を眺めていました。落雷が激しい時には無理に撮影しないようにしています。

気圧の谷が通過した時間帯の筑西市の観測データは、気温が14時10分から15時40分の間に31.5℃から22.1℃に急降下、瞬間最大風速は14時20分に南南東1.7m/s、14時30分に北10.8m/s、14時40分に北西12.7m/s、14時50分に北西15.2m/s、15時00分に北北東12m/s、15時10分に北北東7.4m/sを観測しています。気圧の谷通過時に、急激に気温が下がり、風が強くなったことがわかります。

当日、茨城県内では大雨と落雷の影響により障害が相次ぎ、県内の鉄道、つくばエクスプレス、JR常磐線、JR水郡線で運休や遅れが出る事態となりました。

落雷

枝分かれする対地雷、写真に収めるのは容易ではない。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

雨上がりにはこんな光景が見られました。尾流雲が夕陽を受けてオレンジ色に染まり、発光する様子はまるでオーロラのようでした。日没間近のほんの僅かな時間の出来事です。

尾流雲

夕日に染まる尾流雲、自然が創りだす現象には驚くばかり。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

そして、東の空には虹が現れました。綺麗な半円形を描く虹が日没間近の空に浮かび上がりました。1日でこれほど多くの自然現象を目にすることは滅多にありません。

虹

日没間近の虹、標準ズームではとても収まりきれない。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

2012年9月4日の落雷と一陣の風

2012年9月4日、上空の寒気の影響で北関東で激しい雷雨になりました。栃木県北部で発生した雨雲が発達・組織化しながら南下、茨城県では夕方から雷雨になり、17時過ぎには、茨城、栃木、群馬、千葉、埼玉、各県に竜巻注意情報が発表されました。追跡中、降雹、落雷、ガストフロントを確認しています。積乱雲が接近する様子を撮影していたところ、ガストフロントの発生を確認、16時50分~17時10分頃に掛けて筑西市南部で撮影した動画です。等倍速では長過ぎるため、16倍速で編集しています。



ガストフロントが通過する様子を動画(16X)でとらえた。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

ガストフロントの発生する範囲は局地的で、短時間のうちに終息します。発生からの一部始終を見ていましたが、20分程で終息しました。ガストフロント周辺の気流は不安定で、稀に竜巻や突風性の旋風(ガストネード)が発生することがありますが、多くの場合は通過時に強風を伴う程度で、大きな被害が出ることは稀です。それほど珍しい現象ではなく、激しい雷雨が長時間続く時などに良く見られます。当日の筑西市の気温は、16時が31℃、17時が26.2℃、18時が22℃、2時間で9℃急降下しています。風向きは16時は南東方向、17時には北西方向、17時30分には北東方向、18時は南東方向に変わっています。ガストフロント通過時の瞬間最大風速は、17時に11.5m/s、17時10分に11m/sでした。11.5m/sと言うと大したことないように思いますが、一般的に風速10m/sを超えると傘が壊れ、風に向かって歩くことが困難になると言われています。

ガストフロント

6枚の画像を合成したパノラマ画像。クリックで長辺1200ピクセル表示。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

ガストフロントは強い下降気流(吹き下ろしの冷たい風)により生じるため、突風前線・陣風前線とも呼ばれています。19世紀末頃(明治時代中期頃)には、強風域が線状に移動する状態を陣風線と呼んでいたそうで、ガストフロントのことであると推測できます。また、太平洋戦争中期には陣風と言う名の戦闘機が試作されています。陣風の如く空を翔け抜ける、そんなイメージで付けられた機名なのでしょう。

アーチ雲

にわかに暗雲がたちこめ一陣の風が吹き抜ける、ガストフロント通過の様子。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

雲の中心を避けながら更に追跡を続けます。中心部は雨と落雷が激しく撮影困難なため、中心部を避けるように移動を繰り返します。移動中に防災無線より竜巻注意情報のアナウンスが聞こえ、にわかに緊張が走ります。ギリギリで降雨域に掛かる場所から静止画と動画、2台体制で撮影を続けました。静止画は1/60秒を確保するためISO1250で撮影していますので、少々ノイジーです。

対地雷

車内から手持ちで撮影した対地雷。雷撮影は細心の注意が必要。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

撮影データをバックアップするため一度帰宅しましたが、自宅周辺は道路が乾いていて雨は全く降っていませんでした。撮影場所から家までは数キロで、局地的な雷雨だったことがわかります。

雲間雷

雲底をはうように広がる雲間雷、写真的には対地雷より面白い。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

完全に日が落ちた後は自宅周辺で雲間雷をバルブ撮影しました。夜の雷撮影は花火と同じ要領ですので、難しいことはありません。安全面を最優先に考えた場所でチャレンジしてください。19時前には切り上げましたが、その後雨が降り出し、20時過ぎまで稲妻が光っていました。

*関連記事 「ガストフロントに迫る」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/43/
*関連記事 「ガストフロント - Gust Front」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/7/
*ガストフロントの微速度映像 http://youtu.be/khnU4iSGX-A (2010年6月28日撮影)。

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

2012年8月17日の豪雨

2012年8月17日、上空の寒気と南からの暖湿流の影響により、広い範囲で大気が不安定となり、午後を中心に激しい雷雨になりました。地元茨城県筑西市では、昼前より県北方面および栃木県北部方面にかなとこ雲が見えていました。午後になると複数の積乱雲が組織化して南下してきました。筑西市では13時台より雷鳴が聞こえ、14時7分には茨城県に竜巻注意情報が発表されました。

降水雲

筑西市南部より見た降水雲と筑波山、雲の下は土砂降りだ。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

当日、筑西市南部にて撮影中でしたが、予測よりもやや西に動いていたため市街地方面に向かい追跡中、ダウンバーストと思われる突風に遭遇しました(14時25分頃)。それまで真上から落ちていた雨が突然真横から叩きつけるように降ってきて、一瞬にして視界は真っ白、道路にビールケースや木の枝が転がっていました。大瓶用のビールケースはそれなりの重さがあるため、10m/s前後の風では飛ばされないはずです。直前には降雹も確認、真横から叩きつけるような風が吹いたため、ダウンバーストと推測します。96年の下館のダウンバースト時(F1~F2)も運転中に遭遇しましたが、今回と同じように一瞬にして真っ白になり、視界を奪われました。勿論、風の強さは今回の比ではありません。

下降気流

バケツの底が抜けたように雲底から一気に落ちてくる雨。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

前を走るトラックのテールランプを頼りに、何とか駐車できる場所まで移動し、車内から動画を撮影しました。最も激しかった時に比べると風も弱まっていますが、それでも車がガタガタ揺れるくらいの風でした。雨も凄まじく、息苦しさを感じる程でした。12時過ぎの時点でで33.9℃だった気温が、13時台には26.7℃、最も激しい風雨だった14時台のデータは14時10分に25.1℃を観測して以降、15時30分まで欠落(通信不良?)、15時台には26.1℃と急降下しています。風向きも12時の時点では南寄りでしたが、13時以降は北寄りに変わっています。瞬間最大風速は、14時10分に13m/sを観測して以降、15時30分まで欠落しています。

竜巻と違い、F0クラスのダウンバーストやガストフロント、熱雷による突風は、年間かなりの数が発生しています。目立った被害がなければ気象庁のデータベースにも掲載されないため、年間どれくらい発生しているのか、正確な数はわかりません。最近の傾向として、より局地的で狭い範囲に限定された突風が増えています。



突風により真横から叩きつける雨。数分で終息した。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

ダウンバーストは竜巻研究の第一人者「藤田哲也教授」により1974年に発見された局地現象です。海で発生した場合「白い嵐(White Squall)」と呼ばれ、1961年5月にメキシコ湾で帆船アルバトロス号が沈没、生還した船員の手記を元に映画化されています。61年当時、ダウンバーストはまだ解明されておらず、船乗り達から白い嵐と呼ばれ恐れられていました。

*藤田哲也 1920年-1998年 シカゴ大学名誉教授、竜巻・ダウンバースト研究の世界的権威。
*関連記事 「ダウンバースト - Downburst」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/9/

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

写真家・青木豊

Yutaka Aoki
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