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The Storm Chaser

  

2011年7月1日の追跡

2011年7月1日、暖かく湿った空気の流入で、全国的に大気の状態が不安定になりました。前日に引き続き、関東・東北南部・甲信・東海地方では午後から局地的な雷雨が発生しています。15時前後から、東京・千葉・埼玉が隣接するあたりで積乱雲が発達し、夕方に掛けて雲が北上。東京都、千葉県北西部・埼玉県南部・茨城県南西部・栃木県南部で一時強い雨が降りました。

雷雲

2011年7月1日、茨城県南西部を縦断するかたちで雲が北上。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

夕方になり茨城筑西市周辺にも雨雲が流れてきました。衰退期の積乱雲にありがちな下降気流を伴い、冷たい強風で何度も帽子を飛ばされそうになりました。16時~18時の2時間で気温が約6度下がり、その間に風向きも東から南南西に変わっています。雨雲の通過前後で、90度以上風向きが変わったことになります。

*冷気外出流・・・成熟、衰退期の積乱雲から噴出す冷気(下降気流)。地表に衝突し放射状に流れる。



不気味な雲が垂れ込める中、ひたすらシャッターを切り続けます。普段から悪天候の写真を撮り慣れているとは言え、遮蔽物がない場所での撮影は緊張します。撮影時に怖いのは、何と言っても落雷です。直撃をくらったらひとたまりもありません。要注意です。

対流雲

20011年7月1日、発達した対流雲により、ただならぬ雰囲気に。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

この日、関東~九州で気温が上昇、東北地方から梅雨前線が南下、南からは暖湿流、上空には寒気、大気の状態が非常に不安定で、対流雲の発達しやすい条件が揃っていました。

*暖湿流、暖湿気流・・・暖かく湿った空気。周辺の空気よりも高温多湿。
*対流雲・・・大気の状態が不安定な時に発生する雲の塊、積雲、積乱雲。



撮影開始時に比べ、気温が下がってきました。上空では風が巻いている様で、雲の流れが不安定です。気圧が急激に下がっているのか、耳の奥に微妙な違和感を感じました。

対流雲

2011年7月1日、雲底がこぶ状に盛り上がり、渦を巻き出す。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

上に掲載した写真の様に、あちこちでこぶ状に盛り上がった雲底が、ゆっくりと渦を巻き出しました。この時点でまだ雨は降っておらず、時々遠雷の音が聞こえる程度でした。



ポツリポツリと雨が落ちてきました。レンズに雨粒が付かない様、レンズクロスで拭きながら撮影します。悪条件の中で撮影するため、機材メンテナンスは欠かせません。ひと夏でマウントに錆が出ることも。

漏斗雲

2011年7月1日、地上に向かってのびるて来る漏斗雲。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

3枚目の写真を撮った数十秒後に、地上に向かって漏斗雲がのびてくる様子を確認しました。ゆっくりと回転を伴いながらのびてくる様に一瞬身構えましたが、程なくして消滅しました。一時強い雨が降りましたが、その後雲の勢いは衰え、何事もなかったように静かな夜になりました。

*関連記事 「ゲリラ豪雨」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/15/
*関連記事 「漏斗雲 - Funnel Cloud」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/6/

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

ゲリラ豪雨

ゲリラ豪雨とは、民間気象会社やマスコミにより広げられた、天気図上で予測が難しい局地的大雨を表す俗語です。紛争地域を思わせる言葉に賛否両論ありますが、老若男女を問わず広く注意を促す意味では貢献していると思います。一部で違う言葉に置き換える動きも出ていますが、これだけ浸透している言葉を、今更置き換える必要はない思います。

ゲリラ豪雨に気象学的な定義はなく、判断が難しいところですが、何らかの原因で大気の状態が不安定になった時、急発達した積乱雲によりもたらされる、突発的な大雨が当てはまります。予測が難しいという前置きがあるため、低気圧の接近など、明確な原因がある場合にはゲリラ豪雨と呼びません。ゲリラの意味が示す通り、予測不能の奇襲攻撃的な大雨と考えていいと思います。

アスファルトで固められ、水はけの悪い都市は短時間の大雨に弱く、東京では1時間に50mmを超える雨が降ると、排水機能が間に合わなくなります。1999年7月21にに発生した「練馬豪雨」では、15時から16時の1時間に100mmを超える雨が降り、地下室への浸水で1名の方が亡くなられています。ゲリラ豪雨は、地下の浸水や、アンダーパス(掘り下げ式道路)の冠水など、都市型水害をもたらす原因にもなっています。

雷雲

冠水

降水雲

常に最新の情報を得ることで、危険を回避できる。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

類似する言葉に「夕立」がありますが、気象庁HPによると、夏季のみに用いる雨に関する用語と説明されています。また、夕立は夏の季語にもなっており、風流な印象を受けます。ゲリラ豪雨は凶悪な印象があり、注意を促す言葉として、非常に力があると思います。

*関連記事・・・「記録的短時間大雨情報」http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/92/

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

雷三大多発地帯

世界一の雷多発地帯は、オーストラリア北部に位置するダーウィンです。北から(海から)の暖かく湿った空気と南から(内陸から)の乾いた空気が衝突し、積乱雲を発達させます。最盛期の12月~1月頃になると1秒間に1回落雷があるとも言われ、世界中から研究者が集まってきます。俗に、ダーウィン、中央アフリカ、アマゾンの3ヶ所が、雷の三大多発地帯と呼ばれています。他にも、メキシコ湾沿岸部、南アメリカ、ヒマラヤ、東南アジアでの発生頻度が高くなっています。全世界で1日に発生する雷は約400万回、毎年約2,000人が落雷で命を落としています。

世界の雷発生頻度 / Global Lightning Frequency(外部リンク)
Herald Sun / オーストラリア南部で24時間に173,000回の落雷(外部リンク)

一方、日本に目を向けてみると、台風や梅雨前線の影響を受けやすい九州・沖縄地方、冬季に北西風の影響を受けやすい北陸・東北の日本海側、地形の影響で日射による上昇気流が発生しやすい関東地方内陸部で多く発生しています。中でも夏季(5月~8月)の北関東3県(栃木・群馬・茨城)は雷が多発し、落雷の激しさでも群を抜いています。雷が信仰の対象になっているほどで、栃木県、茨城県、群馬県、福島県の一部では雷を「らいさま」と呼んでいます。

*関連リンク・・・日本の雷多発地帯 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/88/

雷

2010年、田園地帯に轟く雷鳴、北関東では夏の風物詩。© Yutaka Aoki. All rights reserved.



*雷の種類を簡単に説明します。

・熱雷(ねつらい)・・・地表の熱による上昇気流で発生する積乱雲から生じる雷。夕立。
・界雷(かいらい)・・・寒冷前線、温暖前線など、前線付近で発生する積乱雲より生じる雷。
・熱界雷(ねつかいらい)・・・上昇気流と前線の複合要因で発生する積乱雲から生じる雷。
・渦雷(うずらい・からい)・・・台風、低気圧の上昇気流で発生する積乱雲から生じる雷。
・幕電(まくでん)・・・雲内部での放電、雷光の反射により、積乱雲が光って見える現象。
・他にも、火山の噴火や砂嵐の発生時に生じる雷もある。

落雷

2008年、夜空を駆ける晩秋の雷。盛夏の勢いはない。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

雷は季節に関係なく発生しますが、太平洋側は4~10月頃、日本海側は11~3月頃に多くなります。近年、本州の雷日数が増加傾向で、落雷による事故・障害も増えています。

最近の事例
2013年5月15日 沖縄県那覇市 那覇市松尾の5階建てビルに落雷、壁の一部が崩れる。
2012年11月8日 羽田発富山行きの全日空機883便に落雷、機首部分がへこむ。
2011年7月19日 茨城県大洗町 国道51号線で工事中のクレーン車に落雷 負傷者2名
2010年9月23日 千葉県いすみ市 大原小学校校庭で祭りの神輿に落雷 負傷者34名
2010年7月25日 茨城県水戸市 落雷による火災が2件発生 県内2万3500世帯で停電



雷は積乱雲内部で雹や霰がぶつかり合って静電気が大量に蓄積され、蓄え切れなくなった時に放電(落雷)が起こると言われています。乾燥する季節、衣服などが擦れて静電気が蓄積され、ドアノブなどに触れた時に「バチッ!」とくる静電気による放電、これも落雷と同じ原理です。

*落雷発生の原因については諸説あり、現在でも完全に解明されていません。

anvil crawler

2008年10月27日、東日本上空を-22℃の寒気が通過し、関東地方で局地的に雷雨が発生した。この年、東京の雷日数は24日になり、過去最多となった。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

写真家・青木豊

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