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The Storm Chaser

  

雷三大多発地帯

世界一の雷多発地帯は、オーストラリア北部に位置するダーウィンです。北から(海から)の暖かく湿った空気と南から(内陸から)の乾いた空気が衝突し、積乱雲を発達させます。最盛期の12月~1月頃になると1秒間に1回落雷があるとも言われ、世界中から研究者が集まってきます。俗に、ダーウィン、中央アフリカ、アマゾンの3ヶ所が、雷の三大多発地帯と呼ばれています。他にも、メキシコ湾沿岸部、南アメリカ、ヒマラヤ、東南アジアでの発生頻度が高くなっています。全世界で1日に発生する雷は約400万回、毎年約2,000人が落雷で命を落としています。

世界の雷発生頻度 / Global Lightning Frequency(外部リンク)
Herald Sun / オーストラリア南部で24時間に173,000回の落雷(外部リンク)

一方、日本に目を向けてみると、台風や梅雨前線の影響を受けやすい九州・沖縄地方、冬季に北西風の影響を受けやすい北陸・東北の日本海側、地形の影響で日射による上昇気流が発生しやすい関東地方内陸部で多く発生しています。中でも夏季(5月~8月)の北関東3県(栃木・群馬・茨城)は雷が多発し、落雷の激しさでも群を抜いています。雷が信仰の対象になっているほどで、栃木県、茨城県、群馬県、福島県の一部では雷を「らいさま」と呼んでいます。

*関連リンク・・・日本の雷多発地帯 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/88/

雷

2010年、田園地帯に轟く雷鳴、北関東では夏の風物詩。© Yutaka Aoki. All rights reserved.



*雷の種類を簡単に説明します。

・熱雷(ねつらい)・・・地表の熱による上昇気流で発生する積乱雲から生じる雷。夕立。
・界雷(かいらい)・・・寒冷前線、温暖前線など、前線付近で発生する積乱雲より生じる雷。
・熱界雷(ねつかいらい)・・・上昇気流と前線の複合要因で発生する積乱雲から生じる雷。
・渦雷(うずらい・からい)・・・台風、低気圧の上昇気流で発生する積乱雲から生じる雷。
・幕電(まくでん)・・・雲内部での放電、雷光の反射により、積乱雲が光って見える現象。
・他にも、火山の噴火や砂嵐の発生時に生じる雷もある。

落雷

2008年、夜空を駆ける晩秋の雷。盛夏の勢いはない。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

雷は季節に関係なく発生しますが、太平洋側は4~10月頃、日本海側は11~3月頃に多くなります。近年、本州の雷日数が増加傾向で、落雷による事故・障害も増えています。

最近の事例
2013年5月15日 沖縄県那覇市 那覇市松尾の5階建てビルに落雷、壁の一部が崩れる。
2012年11月8日 羽田発富山行きの全日空機883便に落雷、機首部分がへこむ。
2011年7月19日 茨城県大洗町 国道51号線で工事中のクレーン車に落雷 負傷者2名
2010年9月23日 千葉県いすみ市 大原小学校校庭で祭りの神輿に落雷 負傷者34名
2010年7月25日 茨城県水戸市 落雷による火災が2件発生 県内2万3500世帯で停電



雷は積乱雲内部で雹や霰がぶつかり合って静電気が大量に蓄積され、蓄え切れなくなった時に放電(落雷)が起こると言われています。乾燥する季節、衣服などが擦れて静電気が蓄積され、ドアノブなどに触れた時に「バチッ!」とくる静電気による放電、これも落雷と同じ原理です。

*落雷発生の原因については諸説あり、現在でも完全に解明されていません。

anvil crawler

2008年10月27日、東日本上空を-22℃の寒気が通過し、関東地方で局地的に雷雨が発生した。この年、東京の雷日数は24日になり、過去最多となった。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

スーパーセル - Supercell

発達した巨大な積乱雲のことであり、強力なエネルギーと持続性を持っています。単一セル内に上昇気流と下降気流、2つの循環系を持ち、内部では激しい対流を伴っています。スーパーセルの特徴として、反時計回りの回転、フックエコー(鉤状エコー)があります。メソサイクロンにより雲が回転を伴い、気象レーダーには降水の強い部分が鉤状に映ります。上昇気流と下降気流の境界には、地上に向かって降りてくる壁雲(Wall Cloud)が形成され、見た目にも非常に恐ろしく、威圧感のある姿と言えるでしょう。

*北半球では雲・渦の回転は反時計回り、南半球では雲・渦の回転は時計回りになる。

通常、積乱雲の寿命は30分~1時間程度に対し、スーパーセルの寿命は数時間にもおよびます。スーパーセルにより、雷、降雹、長時間の強雨、ダウンバースト、竜巻などが発生します。極端に荒れた天候が長時間続くことがあり、Severe Weather(シビアウェザー)とも呼ばれます。

*セル、降水セル、ストームセル・・・雨雲・低気圧を構成する空気の塊。
*対流・・・暖かい空気(軽い・上昇気流)と冷たい空気(重い・下降気流)の循環、流れ。
*フックエコー(鉤状エコー)・・・エコー画像、降水の強い部分が鉤状に分布している状態。
*メソサイクロン・・・スーパーセルに発生する小規模な低気圧、上昇気流を伴う渦。

スーパーセル

2009年6月2日 積乱雲の雲底に壁雲(Wall Cloud)が形成された。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

Wall Cloudは暖かな上昇気流が下降気流による冷たい雨と触れることで形成され、降下してきます。発達した積乱雲の雲底に付随し、上昇気流と下降気流、無降水域と降水域の境界付近に発生します。高湿度の環境では、Wall Cloudから降水域に向かってのびるTail Cloudが形成されることもあります。Tail CloudはWall Cloudの延長であり、ベースとなる部分はほぼ同じです。



発達した積乱雲の雲底に、こぶ状に盛り上がる雲、乳房雲(ちぶさぐも)が現れることがあります。乳房雲は、雲底で上昇気流と下降気流が衝突した際に、こぶ状になって現れる乱流です。

*乱流(渦巻き)・・・流体(水・気流など)の流れが乱れ、不規則になること。乱気流など。

乳房雲

2010年7月23日、積乱雲の雲底に現れた乳房雲(ちぶさぐも)。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

アメリカでは「乳房雲を見たら丈夫な建物に避難しろ」と言われるくらい、広く知れ渡っています。低い位置に現れる乳房雲は竜巻の前兆とされ、こぶがハッキリしているほど乱流が強くなります。乳房雲の出現は強い下降気流が発生している証拠であり、大雨、降雹、突風などに警戒が必要です。



2011年7月10日、茨城県北部で局地的に50mm/hを超える、非常に激しい雷雨が観測されました。茨城県西部より撮影していましたが、14時頃~16時頃まで、2時間以上も持続していました。当日のレーダー画像には、スーパーセルの特徴であるフックエコーも映っていました。

図解スーパーセル

2011年7月10日、典型的な形のスーパーセルが現れた。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

スーパーセルを図解で説明します。

*Anvil・・・金床・かなとこ。雲の頂上部分が対流圏界面に達し、それより上昇できず左右に広がる。左右に広がり続けるのは発達が続いている証拠。
*Overshooting Top・・・雲の頂上部から、上昇気流が対流圏界面を突き抜けた部分。
*Flanking Line・・・本体に隣接する積雲の列。上昇気流により本体に吸収される。
*Precipitation Area・・・雨の降るエリア・降水域。下降気流域にできる。
*Updrafts・・・上昇気流域、軽く暖かい空気。
*Downdrafts・・・下降気流域、重く冷たい空気。

*対流圏界面・・・対流圏と成層圏の境界。気象現象が起こるのは大気層最下部にある対流圏。



1990年12月11日に千葉県茂原市で発生したF3の竜巻は、スーパーセルにより発生しています。国内最大級の竜巻を発生させたスーパーセルの寿命は、なんと7時間にもおよびました。この日、前線を伴う発達した低気圧の通過により、関東地方は大気の状態が非常に不安定でした。茂原市を含む、千葉県内の6ヶ所で竜巻が発生しています。

かなとこ雲

2009年7月26日、群馬県中南部に激しい雷雨をもたらしたかなとこ雲。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

成長過程で雲頂部に多毛雲が発生するため、かなとこ上部に毛羽立った雲が見えるのは、まだまだ発達が続いている証拠です。この様な雲が近づいてくる場合は警戒してください。

*関連記事 「防災気象情報を活用」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/40/
*関連記事 「境目が危ない」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/33/

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

マルチセル - Multicell

複数の降水セルで構成された積乱雲群のことで、新旧交代をしながら長時間持続、大雨を降らせます。個々のセルは組織化され、発生・発達・成熟・衰退を繰り返します。衰退期のセルから噴出す下降気流と暖かな空気が衝突し、新たなセル(ガストフロント)を形成します。5月~9月頃に発生することが多く、長時間の大雨、同時多発的な集中豪雨が発生しています。ダウンバーストや竜巻などの局地現象を伴うことも多く、突風、雷、雹にも注意が必要です。水はけの悪い都市では、道路の冠水、地下道・地下鉄が冠水するなど、都市型洪水が発生しています。

*降水セル、セル、ストームセル・・・雨雲・低気圧を構成する空気の塊。
*ガストフロント・・・突風前線、気流の衝突により発生する局地的な寒冷前線。上昇気流を伴う。

集中豪雨

2009年7月27日 前線の南側で同時多発的な集中豪雨が発生。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

この日、前線南側に位置する、関東、東北南部、東海地方で同時多発的に集中豪雨が発生しています。浜松市で82mm/hの雨、仙台市で55.5mm/hの雨、館林市でF1~F2の竜巻が発生しました。

*マルチセルの種類

・クラウドクラスター・・・組織化された複数のセルが新旧交代をしながら長時間持続する積乱雲群。これらの雲がひとつにまとまり、渦を巻くようになると熱帯低気圧・台風になる。

・スコールライン・・・寒冷前線の進行方向に向かって平行に並ぶ(新旧交代を繰り返す)積乱雲群。衰退期の積乱雲から噴出す下降気流からガストフロントが発生し、積乱雲が線上に並ぶ。

・バックビルディング・・・積乱雲の風上に次々に新たなセルが発生し、長時間の集中豪雨をもたらす。同じ場所で大雨が持続するため、災害を引き起こす可能性が高い。



2009年7月27日14時頃に群馬県館林市で発生した竜巻は、マルチセルにより発生しています。気象庁のドップラーレーダーによる観測では、ガストフロントの存在と複数の渦も確認されており、ガストフロント上に発生した渦が竜巻本体と見られています。

マルチセル

2009年7月27日 館林市方面に南北に連なる積乱雲が発生。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

2009年7月27日14時頃、群馬県館林市方面に南北に連なる巨大な積乱雲を目視で確認しています。写真奥にかなとこ状の積乱雲があり、埼玉県~群馬県~栃木県を跨ぐかたちで見えていました。その後、カーラジオで突風発生の一報を聞き、写真の積乱雲が原因と知った次第です。観測地の茨城県筑西市から群馬県館林市までは、約50kmの距離です。

*関連記事 「ダウンバースト - Downburst」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/9/
*関連時期 「ガストフロント - Gust Front」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/7/
*関連記事 「漏斗雲 - Funnel Cloud」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/6/
*関連記事 「国内最大級はF3」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/2/

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

写真家・青木豊

Yutaka Aoki
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