御荷鉾の三束雨、群馬県藤岡市・神流町にまたがる御荷鉾山(みかぼやま)に入道雲が掛かると、稲わら三束たばねる間に雷雨になると言うことわざです。そんなことわざがあるように、北関東の内陸部では春から初秋に雷が多発します。上毛三山(赤城山、榛名山、妙義山)から秩父山地、那須連山から日光連山、八溝山地(筑波山が南端)、周囲に山があり、山の斜面で発生した上昇気流により雨雲が発生、発達しながら平野部を進んでいきます。日光蓑に筑波笠、赤城の腰巻・榛名の鉢巻、山に掛かる雲を現したことわざがあるように、地形が大きく影響していることは間違いありません。余談ですが、昔から群馬県と栃木県は「我が県こそが雷日本一だ!」と張り合っています。何事も一番でなければ気が済まない、北関東の気質でしょうか。
ワタシの活動拠点は茨城県西部の筑西市です。雷都宇都宮までは直線距離にして30km強です。この辺りは、群馬県方面から東進してくる雷雲と、栃木県方面から南下してくる雷雲の両方が通過する場所です。ストームチェイサーにとっては、都合のいい場所と言えます。黄色いサークルが雷多発地帯、緑のサークルがワタシの活動地域です。目当ての積乱雲の進行方向10~15km先で待ち構え、撮影したら再び先回りして待ち構える、そんな撮影を繰り返します。
雷の発生が多いということは、それに比例して突風被害も多いということになります。撮影していて最も多く遭遇するのが、ガストフロントです。温度差により発生する局地的な前線で、普段は目に見えませんが、高湿度の状況下では前線面にアーチ状の雲列ができることで可視化します。雲列は、アーチ雲、アーククラウド、シェルフクラウド(棚雲)などと呼ばれています。ガストフロントは突風の一種として扱われていますが、被害が出ない限り気象庁のデータベースにも記載されませんので、正確な発生数はわからないのが現状です。
アーチ雲の下では激しい現象が発生することが多い。© Yutaka Aoki. All rights reserved.
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