2013年3月17日、渡良瀬遊水地の葦焼きに行って来ました。3月の恒例行事で、葦の発芽促進や害虫・外来植物の駆除、樹林化防止が目的です。種の保存には欠かせないことですが、東日本大震災による福島第一原発事故の影響もあり、放射性物質が飛散する恐れがあるとして、2010年以降は中止されていました。3年振りの開催と言うことで、見物に訪れた人は2010年の3倍となる14,000人。報道関係の人も沢山来ていました。これだけの人が集まっても広大な敷地があるため、のんびり撮影することが出来ました。当初は4割に縮小して行う予定でしたが、強風の影響で瞬く間に火は燃え広がり、結果的に9割近くを焼くことになりました。来年以降の開催に影響が出るのではないか、そんな懸念が出て来ました。当日、土手の上は体感で10m/s前後の風が吹いていました。
今回、一番の目的は火災旋風を撮影することでした。一度、轟音を上げながら火柱が上がりましたが、不覚にも撮影失敗。立ち位置と焦点距離の関係で映像を残すことができませんでした。代わりと言っては何ですが、黒煙がモクモクと立ち上がり、発達した積乱雲のように空を覆うシーンが撮影出来ました。地面が温まると上昇気流が発生するのは周知のこと、大規模な火災や野焼きでは乱流も発生します。勢い良く立ち上った煙が太陽を遮り、辺りが薄暗くなるほどでした。暫くの間、煙が空気中に滞留していて、離れて見るとまるで雨雲のようでした。
*葦・・・よしずの原材料にもなるイネ科の植物。アシが忌み言葉になるためヨシに言い換えた。
まるで映画のワンシーンを見ているような錯覚に陥る。© Yutaka Aoki. All rights reserved.
基本的に土手の上からの撮影になるため、広角から望遠まで揃えておいたほうが間違いありません。高倍率ズームがあると便利かもしれませんね。燃え上がるタイミングを逃さないことと、立ち位置が重要になってきます。今回は風上で撮影出来たことがラッキーでした。予備のメディアとバッテリーも必需品です。とにかく、短時間で効率良く撮影することが攻略の鍵でしょう。
ファイヤートルネードとも呼ばれる火災旋風。© Yutaka Aoki. All rights reserved.
立ち位置の関係で小さく写っているだけですが、参考までに火災旋風の写真を掲載しておきます。火災旋風は大規模な火災や野焼きで発生する、炎を纏った旋風です。巨大なつむじ風の様に渦を巻きながら立ち上がり、旋風の温度は1000℃を超えると言われています。関東大震災や東京大空襲の時にも発生し、逃げ場を失った人々が犠牲になっています。今回の葦焼きで確認できた火災旋風は2個、1個目は目の前で火柱が上がりましたが、煙に隠れて撮影失敗。見た目もそうですが、音も凄かったです。強烈な風切り音の様な轟音です。2個目が写真の旋風です。遠い上に煙で視界が悪く、ただの状況写真になってしまったのが残念です。
体感で10m/s前後、強い風切り音に強風を感じる。© Yutaka Aoki. All rights reserved.
足尾鉱毒事件の中心地にもなり、谷中村強制廃村などの歴史がある渡良瀬遊水地。本来の目的は、治水用の調整池ですが、ラムサール条約(湿地の生態系を守る条約)にも登録され、今後は湿地の生態系を守るための、環境保全・再生に力を入れていくと思われます。
*関連リンク・・・Facebookアルバム 渡良瀬遊水地の葦焼き
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