風塵と並ぶ春の風物詩、塵旋風(じんせんぷう)です。別称はつむじ風、英語ではDust Devil(ダストデビル)と呼ばれます。塵旋風は地表付近で発生する上昇気流の渦で、強い水平風が加わると上空数10mまで立ち上がることがあります。小規模のものは日常生活の中でも良く見かけ、塵や埃、落ち葉などを巻き上げることで可視化します。突風の一種として分類されていますが、強度的にはF0以下で、大きな被害を出すことは稀です。
運動会中に塵旋風が発生する映像が度々発信されていますが、学校のグランドは周りを校舎や住宅に囲まれ、そこだけが開けているところが多いため、塵旋風が発生しやすい環境と言われています。テントの巻き上げに関しては、あの形状から上昇気流に対しては無力であり、パイプを地面に打ち込んだり重りを付けたとしても、防ぎ用がないそうです。
麦畑で発生した塵旋風、土煙を上げながら回転している。© Yutaka Aoki. All rights reserved.
規模の大きなものは土煙を上げて数10mまで立ち上がるため、竜巻と間違われることが多々あります。竜巻とは発生のメカニズムが違い、塵旋風は晴れていても発生します。また、ビル風などの環境風で発生することもあり、都市部でも起こりうる現象です。
旋風には昇温+水平風で発生する塵旋風、ガストフロントの上昇気流で発生するガストネード、炎の熱で発生する火災旋風などがあります。その中で最も怖いのが火災旋風です。大規模な火災や山火事で発生することが多く、旋風の温度は1000℃を超えます。関東大震災や東京大空襲、阪神大震災で大規模な火災が発生した長田区でも発生が確認されています。
強烈な風切り音とともに発生した、竜巻状の火災旋風。© Yutaka Aoki. All rights reserved.
上の写真は渡良瀬遊水地の葦焼きで発生した火災旋風です。私は風上の栃木県側で撮影していましたが、風下の埼玉県側で撮影していた人の話では、煙と熱風に巻かれて生きた心地がしなかったそうです。当日は、強風の影響で予定していたよりも広範囲に燃え広がり、遊水地の外にある物置小屋が焼ける被害も出ています。
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http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/72/*関連記事・・・ビルの谷間でつむじ風
http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/56/*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。