ストームチェイサーにも二通りの人間がいて、気象的なアプローチをする人、ビジュアル的なアプローチをする人。ワタシは間違いなく後者で、気象人ではなく写真人。発生のメカニズムや予報学的なものにはあまり興味がなく、今、目の前で起こっている現象が全てであり、それを撮影することを目的としている。ただし、写真を撮るには被写体を理解する必要がある。目の前で起こっている現象が何なのかわからなければ撮影できないし、自分の身に危険が及ぶこともある。だから、最低限の気象学は身に付けておく必要がある。
気象写真は一期一会で、同じ写真は二度と撮れない。失敗したから後日改めて、という訳にいかない。これは全ての撮影ジャンルに共通していることだが、気象写真の場合はその傾向がより強いと言っていい。季節や地域に関係なく発生するし、それを予測することも難しい。実際、ヒットよりも空振りすることが多い。ワンシーズンを通し、数100枚から数1000枚を撮影するが、本当に気に入った写真はシーズン中1~2枚撮れたらいい方だ。撮影技術ではカバーしきれない部分が大きいため、本当に難しいし、撮れた時の達成感も強い。
気象現象というものは、身近で発生しているにもかかわらず、文章や言葉では説明しづらいものだ。だからこそ写真が必要であり、多少の危険を冒しても撮る価値があると確信している。長文のレポートを、たった1枚の写真で表現できるからだ。気象写真は、自然科学、景観、報道の要素も含んでいるジャンルであり、多角的なアプローチが可能だ。まだまだ未開拓のジャンルだが、可能性は大きく今後発展するジャンルだろう。
荒天の撮影はスポーツをしている感覚に近い。
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