2012年12月、師走に入った途端に強烈な寒気の影響で冷蔵庫と化した日本列島、茨城県西部から栃木県南部にかけても冷え込みが厳しく、1日には雹(ひょう)や霰(あられ)、初雪を観測した地域も多くなりました。翌日、2日の朝も厳しい冷え込みで、最低気温は茨城県筑西市で-3.9℃、お隣の栃木県真岡市で-6.4℃を観測しました。
*関連記事 「2012年12月1日の霰(あられ)」
http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/53/空一面に広がる筋雲が見事だ。先を急いでいたが思わず車を止めて撮影した。
© Yutaka Aoki. All rights reserved.上の写真は12月2日の午前11時頃、栃木県真岡市と益子町の境で撮影した筋雲です。筋状の雲が放射状に広がり、青空とのコントラストも見事だったため、思わず脇道に入り車を止めて撮影してしまいました。強い寒気が入ると筋雲が見られるのは、ベナール対流が関係しています。ベナール対流を簡単に説明すると、上層と下層で温度差が生じた時に現れる、規則的なパターンを持つ対流です。それにより生じた規則的な形の雲(巻積雲)が、強い季節風に乗って筋状にのびて行きます。
多くの人は日常の中でベナール対流を目にしているはずです。味噌汁を放置しておくと、徐々に分離してまだら模様になっていきます。味噌汁の下の方は温かく、表面は外気で冷めていく、表面は冷たく重いので沈み、下の方は温かく軽いのでわき上がってくる、その流れがベナール対流です。
*気象衛星から見た筋状の雲と筋雲は違います。筋状の雲は積雲や積乱雲の連なり、筋雲は巻雲。
逆転層の下に生じた直線的な雲、定規で引いたように真っ直ぐで面白い。
© Yutaka Aoki. All rights reserved.上の写真の直線的にのびた雲は、放射冷却による接地逆転層の仕業です(12月2日撮影)。逆転層を簡単に説明すると、暖かい空気が冷たい空気に重なっている状態、地上の冷気が上空の暖かい空気で蓋をされている状態です。放射冷却により接地逆転層(地上に接地している逆転層)が生じると霧や煙などが閉じ込められ、上昇できずに真横にのびて行きます。
当日、周辺に野焼きの煙などは見当たらなかったので、これは逆転層の下に生じた雲と思われます。この後、徐々に形が崩れ、約15分後には消滅してしまいました。年に数回は見る現象ですが、定規で引いたように一直線の雲はかなりレアだと思います。オーストラリア北部などで発生するモーニング・グローリーと呼ばれるロール状で直線的にのびる雲、これも逆転層がひとつの要因になっていると言われています。今回の雲はモーニング・グローリーほど壮観ではありませんが、冬の風物詩として、身近な気象現象として興味をそそられますね。
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