アメリカ東海岸を襲ったハリケーン「サンディ」。複数の異なる影響を受け勢力を拡大、モンスターのごとく発達・変質していることから「フランケンストーム(franken storm)」と呼ばれているそうです。悪天候を指す呼名は俗称も含めて沢山あります。今回は代表的なものをいくつか取り上げ、解説したいと思います。
【嵐(storm)】 - 強風を伴う雨など、荒れた天候の総称・俗称。気象学的な定義はなく、春嵐など、荒れた天候の総称として使われることが多い。
【夕立(shower)】 - 夏の午後から日没までに発生する局地的で短時間に降る雨(雷雨)を指す。ごく狭い範囲で発生するため、夏の雨は馬の背を分ける、と言うことわざもある。日本の夏の風物詩でもあり、夏の季語にもなっている。
【スコール(squall)】 - 突発的な強風、風雨・風雪を指す。WMO(世界気象機関)により、毎秒8m以上の風速増加と、最大風速11m/s以上が1分以上持続するものと定義付けられている。
【メイストーム(may storm)】 - 5月の嵐、4月~5月に急速に発達して強風を伴う温帯低気圧を指す。和製英語であり、英語圏では通じない。1954年5月9日~10日にかけて、華北から日本海を進んできた低気圧が急速に発達、北海道周辺海域で操業中のサケ・マス漁船が集団遭難し、361人が犠牲になった。2012年4月3日、発達中の低気圧により列島各地に暴風警報が出され、広い範囲で大きな被害をもたらした。
【爆弾低気圧(bom cyclone)】 - 急速に発達する温帯低気圧を指す。半日以上にわたり、中心気圧が1時間あたり1hPa以上低下する温帯低気圧を指している。冬季の日本海や三陸沖などで発達することが多く、日本海側や北日本に大雪をもたらす。アメリカ・カナダではノースイースター(northeaster)、略してノーイースター(nor'easter)と呼ばれる。
【スーパー台風(super typhoon)】 - 最大風速が強い台風を指す。JTWC(米軍合同台風警報センター)で使われる台風の強さを示す分類、super typhoonが語源。1959年9月21日、日本の台風史上、最も大きな被害を出した伊勢湾台風では、最大風速75m/sを観測、死者・行方不明者合わせて5,098人が犠牲になった。2012年、台風16号(サンバ)・台風17号(ジェラワット)がスーパー台風に分類されている。
【陣風(gust)】 - 寒冷前線通過などにより急に強まる風を指す。19世紀末頃、強風域が直線的に移動する状態を陣風線(squall line)と呼んでいた。歴史小説などで、にわかに暗雲がたちこめ一陣の風が吹き抜ける、などと表現されることが多い。
【デレチョ(derecho)】 - 強いボウエコー(弓状エコー)を指す。激しい暴風や雷雨を伴い、渦を巻かないハリケーンとも呼ばれる。多数のボウエコーが直線的に並んだ状態をシリアルデレチョ、長時間持続し移動距離の長いボウエコーをプログレッシブデレチョ、双方の性質を持つボウエコーをハイブリッドデレチョと呼ぶ。スペイン語の単語、derecho(真っ直ぐ)が語源。
【パーフェクトストーム(perfect storm)】 - 複数の要因で発達する未曾有の大嵐を指す。北大西洋上でハリケーン、温帯低気圧、寒冷前線、異なる3つの要因が重なり発達したパーフェクトストームより遭難したマグロ漁船の運命を書いたノンフィクション小説。後にジョージ・クルーニー主演で映画化された。
【ホワイトスコール(white squall)】 - 白い嵐、ダウンバーストを指す。ダウンバースト解明以前(1974年に解明)に船乗りたちが使った俗称。1961年5月2日、メキシコ湾を航海中の帆船アルバトロス号がホワイトスコールにより遭難、沈没し6人が犠牲になった。生還した船員、チャック・ギーグの手記を元に、リドリー・スコット指揮のもと映画化された。
陣風線が発達し、持続するものをデレチョと考えていいだろう。
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