2012年8月17日、上空の寒気と南からの暖湿流の影響により、広い範囲で大気が不安定となり、午後を中心に激しい雷雨になりました。地元茨城県筑西市では、昼前より県北方面および栃木県北部方面にかなとこ雲が見えていました。午後になると複数の積乱雲が組織化して南下してきました。筑西市では13時台より雷鳴が聞こえ、14時7分には茨城県に竜巻注意情報が発表されました。
筑西市南部より見た降水雲と筑波山、雲の下は土砂降りだ。
© Yutaka Aoki. All rights reserved.
当日、筑西市南部にて撮影中でしたが、予測よりもやや西に動いていたため市街地方面に向かい追跡中、ダウンバーストと思われる突風に遭遇しました(14時25分頃)。それまで真上から落ちていた雨が突然真横から叩きつけるように降ってきて、一瞬にして視界は真っ白、道路にビールケースや木の枝が転がっていました。大瓶用のビールケースはそれなりの重さがあるため、10m/s前後の風では飛ばされないはずです。直前には降雹も確認、真横から叩きつけるような風が吹いたため、ダウンバーストと推測します。96年の下館のダウンバースト時(F1~F2)も運転中に遭遇しましたが、今回と同じように一瞬にして真っ白になり、視界を奪われました。勿論、風の強さは今回の比ではありません。
バケツの底が抜けたように雲底から一気に落ちてくる雨。
© Yutaka Aoki. All rights reserved.
前を走るトラックのテールランプを頼りに、何とか駐車できる場所まで移動し、車内から動画を撮影しました。最も激しかった時に比べると風も弱まっていますが、それでも車がガタガタ揺れるくらいの風でした。雨も凄まじく、息苦しさを感じる程でした。12時過ぎの時点でで33.9℃だった気温が、13時台には26.7℃、最も激しい風雨だった14時台のデータは14時10分に25.1℃を観測して以降、15時30分まで欠落(通信不良?)、15時台には26.1℃と急降下しています。風向きも12時の時点では南寄りでしたが、13時以降は北寄りに変わっています。瞬間最大風速は、14時10分に13m/sを観測して以降、15時30分まで欠落しています。
竜巻と違い、F0クラスのダウンバーストやガストフロント、熱雷による突風は、年間かなりの数が発生しています。目立った被害がなければ気象庁のデータベースにも掲載されないため、年間どれくらい発生しているのか、正確な数はわかりません。最近の傾向として、より局地的で狭い範囲に限定された突風が増えています。
突風により真横から叩きつける雨。数分で終息した。
© Yutaka Aoki. All rights reserved.
ダウンバーストは竜巻研究の第一人者「藤田哲也教授」により1974年に発見された局地現象です。海で発生した場合「白い嵐(White Squall)」と呼ばれ、1961年5月にメキシコ湾で帆船アルバトロス号が沈没、生還した船員の手記を元に映画化されています。61年当時、ダウンバーストはまだ解明されておらず、船乗り達から白い嵐と呼ばれ恐れられていました。
*藤田哲也 1920年-1998年 シカゴ大学名誉教授、竜巻・ダウンバースト研究の世界的権威。
*関連記事 「ダウンバースト - Downburst」
http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/9/
*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。