地震雲には科学的根拠は無く、時としてデマの元になる俗説です。阪神大震災以降にマスメディアを中心に広まり、勝手な解釈で一人歩きしてしまいました。目撃情報のほとんどは後から付け加えられたものであり、信憑性に乏しいものばかりです。地震雲と呼ばれる雲には、放射状に広がる雲、帯状にのびる雲、竜巻状の雲などがあります。写真等で検証してみると、そのほとんどは巻雲(けんうん)か飛行機雲の形が崩れたものでした。また、肯定派から断層雲と呼ばれる雲は、そのほとんどが夕日に染まる層積雲です。テレビの情報番組等で特集が組まれ、大げさな効果音とともに、もっともらしい解説をしているため、騙されてしまう人が多いようです。少しでも気象学をかじっている人が見れば、すぐに嘘だとバレてしまうようなお粗末な内容です。
*地震雲は俗名であり、気象学的な定義はありません。国際雲図帳にも分類されていません。
2010年7月12日 梅雨の晴れ間、夕日に染まる層積雲。
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大手検索サイトより「地震雲」で画像検索をした結果、巻雲(すじ雲)、巻積雲(うろこ雲)、飛行機雲、層積雲、レンズ雲(つるし雲)、高積雲(ひつじ雲)、波状雲など、気象好きから見れば特に珍しくない雲ばかりが表示されました。上記の雲は時に奇妙な形を形成することがあり、見た目から悪い印象を受けたのかもしれません。また、垂直の光芒「太陽柱・月柱」を、地震に関連する発光現象と力説されている方もいるようです。太陽柱・月柱は大気光学現象のひとつであり、こちらも地震との因果関係は証明されていません。揺れの最中に起こる発光現象は、送電設備の破損による発光である可能性も指摘されています。
2008年9月23日 秋の夕暮れ時、帯状にのびる高積雲。
© Yutaka Aoki. All rights reserved.肯定派の方々は雲の形だけで判断しており、当日の気象条件と照らし合わせることをしていません。雲の発生には必ず気象的な要因があり、地震と関連付けるには無理があります。偶然の一致があったとしても、科学的根拠が無ければそれを証明することは出来ないのです。結論として、地震雲は噂の一人歩き、思い込みや恐怖心が作り出した俗説と考えています。毎日どこかで地震が発生している地震大国日本ですから、こじつけ話を作りやすい環境と言えます。雲で地震を予知出来るなら、関係省庁も苦労しませんよ。
*予知、予測に関して、科学的根拠があるものをいくつか挙げておきます。
・太陽に暈が掛かると雨・・・巻雲、巻層雲は低気圧の接近に伴い発生する。
・山に笠雲が掛かると風・・・低気圧・前線からの風が山の斜面に当たって雲が形成される。
・夕焼けの翌日は晴れ・・・日本の天気は、偏西風により西から東に移動する。
・遠くの音が良く聞こえると雨・・・湿度が高いと音の伝達速度が速くなるため、良く聞こえる。
2010年7月18日、巻雲と幻日、太陽光の屈折により現れる。
© Yutaka Aoki. All rights reserved.*2011年現在、特定の雲の出現と地震発生の因果関係は証明されていません。
*公的機関での研究も進んでおらず、裏を返せば研究に値しないテーマと言えるでしょう。
*地震雲は、都市伝説やオカルト信仰の類であり、悪徳商法にも利用される悪しき俗説です。
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