回転する上昇気流域、メソサイクロンを伴う単一セルの積乱雲をスーパーセルと呼びます。単一セル内に上昇気流と下降気流、独立した二つの循環系を持つため効率よく対流が行われ、凄まじいパワーと持続性を兼ね備えています。
降水域(下降気流域)と無降水域(上昇気流域)の境目には温度差で発生する壁雲(ウォールクラウド)が地上に向かって降りてきます。壁雲は舞台と客席を仕切る幕のように垂れ下がり、反時計回りの回転を伴います。高湿度の条件下では、壁雲から降水域(下降気流域)に向かって伸びるテーパー状の雲、テイルクラウドが発生することがあります。テイルクラウドの発生は気流の乱れを表すものであり、断片雲が激しく上下動を繰り返す場合、突風などの激しい現象が発生する恐れがあります(2011年7月5日、茨城県西部で撮影)。
降水域に伸びるテーパー状の雲がテイルクラウドだ。© Yutaka Aoki. All rights reserved.
冷気外出流により、局地的に現れる寒冷前線(ガストフロント)が可視化することはよくありますが、ごく稀に、壁雲の上から無降水域(上昇気流域)に向かって、水平方向に伸びる雲列が見られることがあります。ビーバーテイル(Beaver('s) Tail / ビーバーの尻尾)と呼ばれる雲で、局地的な温暖前線が可視化した姿です。竜巻や漏斗雲以上に珍しい現象で、私もこれほど鮮明に現れたビーバーテイルは、一度しか見たことがありません。なお、ビーバーテイルはストームチェイサーのスラングであり、気象用語ではありませんのでご注意下さい。
画面奥から右側に伸びているのがビーバーテイルだ。© Yutaka Aoki. All rights reserved.
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