気流の収束により発生するメソスケールの前線、これだけ読んでも何のことかわからないと思います。積乱雲から吹き下ろす冷たい空気と、周囲の温かい空気が衝突したところに発生する局地的な前線、それがガストフロントです。Gustは突風、Frontは前線を意味し、陣風線や突風前線とも呼ばれます。強い上昇気流を伴い、稀にガストネード(突風性の旋風)が発生することがあります。メカニズム的にはつむじ風に近く、竜巻とは全くの別物です。ガストフロントが発生すると、急激な気温の低下、風向きの急変、気圧の急上昇、落雷や雹といった激しい現象が発生します。
*ガストフロント発生時のレーダー画像
群馬県館林市 /
茨城県取手市(外部リンク)
積乱雲に付随するアーチ雲は、副変種として扱われる。© Yutaka Aoki. All rights reserved.
冷たい空気と暖かい空気が衝突すると、お互いに行き場をなくし、密度の小さい(軽い)温かい空気が冷たい空気に乗り上げる形で上昇気流が発生します。上昇気流により積雲が発生し、前線に沿ってアーチ状の雲列が形成されます。ガストフロントが可視化した姿でもある、アーチ雲と呼ばれる積乱雲の雲底に付随する雲です。アーククラウドやシェルフクラウドとも呼ばれますが、日本ではアーチ雲と呼ぶのが一般的です。特に高湿度の状況下では、アーチ雲から地上に伸びるテーパー状の雲、テイルクラウドが形成されることがあります。極端な温度差により形成され、無降水域から降水域に向かって伸びていきます。テイルクラウドは漏斗雲と並んで危険な雲の代表格であり、この雲を見たらかなりヤバい状況だと考えていいでしょう。
高湿度の状況下で現れたテイルクラウド。危険な状況だ。© Yutaka Aoki. All rights reserved.
ガストフロントの発生は珍しいことではなく、多くの人は遭遇しているはずです。知名度が低いためゲリラ豪雨の一言で片付けられてしまうことが多く、発生していることにすら気付かれないのが現状です。低い位置に垂れ込めた暗雲が、勢い良く頭上を通過して行くような時はガストフロントの可能性が高いです。
最近の事例
2012年8月6日 新潟県新潟市・五泉市 負傷者5名 住宅半壊1戸 樹木・電柱倒壊等
F12011年7月5日 新潟県燕市 負傷者10名 屋根瓦・窓ガラスの破損等 F0
2011年4月25日 茨城県取手市 住宅屋根・プレハブ小屋の破損等 F0
2008年7月27日 福井県敦賀市 死者1名 最大瞬間風速29.7m/sを記録・テント破損等 F0
*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。