竜巻を追ってアメリカ中西部の平原地帯を機材満載のRV車で疾走する、ストームチェイサーにそんなイメージを持つ方々も多いと思う。しかし、日本の道路事情を考えるとそれは不可能だと言わざるを得ない。制限速度の問題、市街地の渋滞、駐車の問題、ガソリンの価格、難題が山積みなのである。ある時期から広範囲に荒天を追うことを止め、活動範囲を限定して待ちの戦法に変えた。レーダーを見ながら発達しそうな雨雲があれば、進行方向に先回りして獲物が来るのをひたすら待つのである。長い時には2時間以上待つこともある。狭い日本では、無駄に移動するよりも的を絞って待った方が確実だと言える。
見ている間に発達し、巨大化した積乱雲(かなとこ雲)。
© Yutaka Aoki. All rights reserved.獲物を待っている間も状況は刻々と変わる。雲の動き、気温、風向きなど、小さな変化も逃さないように、集中を持続しておかなければならない。発達した積乱雲が迫る場合、親雲に先駆けてガストフロントが通過することも多い。短時間に強風が吹き荒れ、横殴りの雨が降る。あっと言う間に通過してしまうが、そこで安心してはいけない。本番はこれからだ。雲の中心に入らないように、少しずつ移動を繰り返しながら撮影を続ける。安全を第一に考えながら、雲の側面に回り込むことが多い。雲の勢力が衰えてくると、断片雲(ちぎれ雲)が目立つようになる。徐々に雲の形が崩れ、日差しが戻ってくる。撮影終了の合図である。緊張感から解き放たれ、平常心に戻る瞬間だ。
ガストフロントの通過を車中から眺める。自然の力に脱帽。
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