以前、アメリカのストームチェイサーについて記事を書いたことがあります。今回は、日本におけるストームチェイサーの存在価値について書きたいと思います。
結論から言えば、日本ではストームチェイサーの存在価値はありません。2012年5月6日に北関東を襲った竜巻の後、多くの映像がメディアに流れました。そのほとんどは視聴者提供の映像です。撮影・通信機器の普及により、たまたまその場に居合わせれば、誰でも映像を配信できる世の中です。狙って撮った映像でも、偶然撮れた映像でも、使う側からすれば価値は同じなんです。日本では誰もがストームチェイサーであり、誰もが報道カメラマンである、そう言えるでしょう。
悪天候の追跡をする上で、日本人の気質も障壁になっています。古くから日本人の美徳とされる、遠慮や自粛といった謙虚な姿勢が壁となっています。ワタシは気象・局地現象の写真をネイチャー写真の一部だと考えていますが、残念ながら日本での扱いは災害の写真。いち早く映像を配信しても、日本人の美徳に反する行為と受け取られてしまうこともあります。東日本大震災後の過度の自粛ムードがいい例だと思います。余談ですが、視聴者提供映像は基本的に無償提供であり、謝礼等は一切ありません。希望すれば撮影者として名前くらいは載せてくれますが、収入につながることはありません。
2012年6月10日 年中悪天候ばかり撮影している訳ではない。狙うのは自然写真全般だ。
© Yutaka Aoki. All rights reserved.1986年8月に下館市(現筑西市)で発生した台風10号による大洪水、1996年7月に下館市(現筑西市)で発生した国内最大級のダウンバースト、いずれもリアルタイムで遭遇しています。東日本大震災では震度6強の揺れに遭遇し、ライフラインの途絶えた生活も経験しました。ちなみに地震発生日の3月11日は、ワタシの誕生日でもあります。歴史に残るであろう大災害に何度となく遭遇し、自然の怖さを肌で感じています。それでも悪天候を追い続けるのは、荒々しい空に魅せられてしまったからかもしれません。
*昭和61年8月4日、台風10号により小貝川決壊
http://www.city.chikusei.lg.jp/cms/data/doc/1261102290_doc_5.pdf(外部リンク)
2012年6月18日 日刊スポーツ社会面にインタビュー記事が掲載された。
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