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The Storm Chaser

  

夏の雨は馬の背を分ける

2014年7月28日、茨城県北部から県央部にかけて夕立がありました。特に荒れた様子はなく、雷鳴も聞こえませんでした。いわゆる夕立、夏の風物詩です。ここ数年の局地的な豪雨は凶暴さを増すばかり、夕暮れ時に涼をもたらす夕立の存在を脅かしています。

夕立に関連することわざに「夏の雨は馬の背を分ける」があります。夏の雨(夕立)は局地的で、ほんの数100m移動しただけで雨のエリアから出てしまう、そんな意味です。この場合の馬の背は、山の尾根を意味しています。夏の午後、友達と自転車でとなり町まで出かけ、夕立にあって駄菓子屋の軒先で雨宿り・・・そんなノスタルジックな気分にしてくれるのが夏の雨です。

かなとこ雲

かなとこ雲

衰退期のかなとこ雲、進行方向にガストフロントが見える。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

寒冷前線通過による突風

2014年7月27日、低気圧からのびる寒冷前線の影響により広い範囲で大気の状態が不安定になり、北関東では昼過ぎから15時頃にかけて激しい雷雨になりました。前線通過時の最大瞬間風速は、栃木県宇都宮市で32.3m/s、群馬県館林市で22.4m/s、茨城県水戸市で20.8m/s、福島県白河市で18.3m/s、埼玉県熊谷市で14.1m/sでした。地元の茨城県筑西市では最大瞬間風速20.5m/s、13時の気温34.7度から15時には23.8度に急降下しています。当日、13時過ぎから茨城県南西部と栃木県南東部が接する辺りで撮影していましたが、アーチ雲の接近と同時に西寄りの風が強まり、風塵が発生しました。動画を撮影していたカメラは、三脚ごと風に飛ばされ転倒しています。当日、関東1都6県、山梨県、福島県で竜巻注意情報が発表されていました。



寒冷前線通過時には、落雷、突風、雹などに注意したい。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

その後、前線を追って東に移動しましたが、思った以上に足が速く、途中で追跡をあきらめざるを得ませんでした。落雷による停電も各地で発生していたようで、追跡中に信号やお店の照明が消えているところもありました。栃木県さくら市、塩谷郡塩谷町、宇都宮市ではダウンバースト(F0)による被害が、群馬県伊勢崎市、栃木県佐野市、栃木市ではガストフロント(F0)による被害が発生しています(リンクをクリックすると気象台の調査報告表示・PDF)。

午前中にレーダーをチェックした時は前線が日本海側にあったため少々油断していましたが、予想していたよりも2~3時間も速く前線が接近してきたため、危うく撮り逃すところでした。昼過ぎから西にかなとこ雲が見えはじめ、13時前には遠雷が聞こえたため緊急出動になりました。前線の通過は速く、15時前には青空が見え、夕暮れ時には美しい夕焼けが見られました。

落雷

寒冷前線

寒冷前線

夕焼け

撮影地の最高気温は35℃、平野部の昇温で対流が活発化。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

チェイサーの気象学

関東の梅雨も開け、本格的に暑い夏がやって来ました。夏といえば突然の雷雨や豪雨がつきもの、日中の昇温が雨雲を発達させます。そんな夏に活躍するのは気象レーダー、気象庁をはじめ、民間気象会社、電力会社などのHPで無料で閲覧することが出来るので、使わない手はありません。初めはとっつきにくいかもしれませんが、慣れてくると何時間後に雷が鳴るか、雨が降るか、わかるようになってきます。ただで使えるものは最大限に利用しましょう。

雄大雲

積雲が成長し、雄大雲(雄大積雲)へと発達した様子。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

雷雨が発生する要因としては、上空と地上の温度差、湿気、風の収束などが主な原因です。ストームチェイサーは雷雲が発生する前に現場に到着し、雲の発達を待ち構えます。発生してからでは間に合わないため、先手を打つ訳です。とは言え、当たる確率は3割~4割程度。ハズレの方が大きいのです。最新の科学である気象レーダーと、先人たちの知恵である観天望気を駆使し、日夜悪天候を追っていますが、追跡者をあざ笑うかのように裏をかかれてしまいます。



2014年4~6月までの追跡ダイジェスト。落雷、豪雨など。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

気象現象に関してはひと通り勉強をしてきました。写真家である以上、被写体の特性を知らなければ撮影にならないからです。ただ、入り口は本当に狭く苦労の連続でした。気象関係の本というと専門用語が多く、読み手を選ぶ本ばかり。気象の素人が手を出しても2~3ページ読んだだけで挫折してしまう。そんな中、救世主的な2冊の本に出会いました。

1冊目は気象予報士の金子大輔さんの著書「こんなに凄かった!伝説の「あの日」の天気。過去の事例をわかり易く解説しています。写真やイラストも豊富で読みやすく、気象への入口が大きく広がったように思います。「そう言えば、こんなことあったなぁ~」的に読むことが出来る気象本です。ワタシが撮影したスーパーセルの写真も2枚掲載されています。

2冊目は気象庁気象研究所の研究者、荒木健太郎さんの著書「雲の中では何が起こっているのか~雲をつかもうとしている話」。雲の中で起こっていることを、イラストや写真でわかり易く解説しています。入り口のハードルは低いのに、読み終わる頃には気象の知識が付いているという、気象本の概念をぶち壊した1冊です。

おすすめ

電車の中やちょっとした待ち時間などにもサラっと読める。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

どちらかと言えば、文献よりも現場で得た知識のほうがはるかに有効で、論より証拠、百聞は一見にしかずの精神で、撮影時に体感したことを吸収するのがチェイサーの気象学です。ただし、それでは不十分なんですね。不足している部分を補うためには専門家の知識が必要なんです。上記の2冊との出会いは、改めて気象を勉強し直す良いきっかけになりました。

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

写真家・青木豊

Yutaka Aoki
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