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The Storm Chaser

  

雄大雲と積乱雲

2011年7月9日、関東地方では例年よりも10~15日も早く「梅雨明けした」と発表がありました。梅雨明け十日と言われる様に、朝から気温がグングン上昇、夏空が広がりました。

*梅雨明け十日・・・梅雨明けから10日前後は天候が安定し、気温の高い状態が続く。

いよいよ夏本番です。気象好きから見た夏の風物詩と言えば、入道雲と夕立です。夏の夕方、入道雲が現れてザーッと雨が降り、雨上がりに縁台で夕涼み・・・そんな感じです。近年、ゲリラ豪雨という言葉が乱用され、そんな風情も薄れてしまいました。乱用は避けたいですね。

*入道雲・・・夕立の前にモクモクと立ち上がる雲。雄大雲(雄大積雲)・積乱雲を表す俗名。
*夕立・・・夏の午後~夕方に発生する雷雨・にわか雨を表す。夏の季語にもなっている。
*ゲリラ豪雨(集中豪雨)・・・マスコミ・民間気象会社により広められた俗語。

雄大雲

2011年7月9日、夏の午後、成長を続ける雄大雲(雄大積雲)。© Yutaka Aoki. All rights reserved.



日中気温が上昇し、地表・水面が暖まることで上昇気流が発生、積雲が現れます。積雲が成長すると雄大雲(雄大積雲)になり、そこからさらに発達すると積乱雲になります。雄大雲(雄大積雲)と積乱雲の違いは雷発生の有無であり、雷を伴わない場合は雄大雲(雄大積雲)、雷を伴う場合は積乱雲と定義付けされています。

積乱雲

2011年7月10日、発達した積乱雲、頂上がかなとこ状になった。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

積乱雲がかなとこ雲にまで発達すると、激しい雷雨、降雹、突風などを伴うことが多くなります。左右に広がり続けるのは発達が続いている証拠で、衰退期に入ると断片雲が目立つ様になります。

*かなとこ雲・・・積乱雲が対流圏界面に達し上昇できなくなると、左右に広がる。
*断片雲・・・ちぎれ雲、積雲や層雲がちぎれて形が崩れたもの。雨上がりに良く見られる。



積乱雲がスーパーセル・マルチセル化すると寿命が数時間におよぶことがあり、長時間雨を降らせ、災害をもたらします。その多くは寒気や暖湿流の影響で対流活動が活発化した時で、通常は短時間のうちに収束します。



2011年7月10日、かなとこ雲が発達する様子を捉えた動画(10倍速で再生)。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

*関連記事 「ゲリラ豪雨」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/15/
*関連記事 「スーパーセル - Supercell」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/13/
*関連記事 「マルチセル - Multicell」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/12/

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

2011年7月5日の追跡

2011年7月5日、オホーツク海にある低気圧から伸びる前線の影響で大気の状態が不安定でした。新潟県燕市では、午前9時20分頃にガストフロントによる突風が発生し、負傷者が出ています。新潟県三条市では、午前9時30分頃にダウンバーストによる突風が発生しています。

地元、茨城県西部では朝から晴れて気温が上がりました。午後から栃木県中南部で積乱雲が発達し、15時頃に掛けて茨城県西部にも雲が掛かってきました。雨雲通過時には下降気流が発生したようで、地面に叩きつけるような大粒の雨が落ちてきました。短時間で通過していきましたが、通過時は雷を伴い、一時的に風が強まりました。

wallcloud

2011年7月5日、積乱雲の雲底にWall Cloudが形成された。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

雨雲通過前の風向きは南、雨雲通過中は北西、雨雲通過後は北東に変わっています。筑西市のアメダス状況、14時/32.4℃/南2m/s、15時/24.8℃/北西6m/s、16時/27.9℃/北東3m/s。当日、筑西市では雷注意報、大雨注意報が出ていました。



積乱雲の雲底に付随するWall Cloud、そこから地上に向かってのびるTail Cloudが形成されました。Wall Cloudは上昇気流と下降気流の境界付近に形成され、地上に向かって降りてきます。上昇気流が下降気流の冷気に触れて形成されるため、Wall Cloudが長時間持続すような場合、下降気流が持続している証拠であり、降雹やダウンバーストを警戒する必要があります。

スーパーセル

2011年7月5日、降水域に向かってのびている雲がTail Cloud。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

*Wall Cloud(ウォールクラウド)、Tail Cloud(テイルクラウド)、発達した積乱雲の雲底に形成される。



Wall Coludは無降水域と降水域の境界でもあり、画面左側は無降水域、右側は降水域になります。Tail CloudはWall Cloudの延長で、降水域に向かってのびていきます。Tail Cloud周辺で断片雲が上下動を繰り返している場合、気流が乱れている可能性があります。竜巻やダウンバーストなど、突風に対する警戒が必要です。

tailcloud

2011年7月5日、Wall CloudとTail Croud、無降水域と降水域。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

*関連記事 「ゲリラ豪雨」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/15/
*関連記事 「スーパーセル - Supercell」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/13/

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

2011年7月1日の追跡

2011年7月1日、暖かく湿った空気の流入で、全国的に大気の状態が不安定になりました。前日に引き続き、関東・東北南部・甲信・東海地方では午後から局地的な雷雨が発生しています。15時前後から、東京・千葉・埼玉が隣接するあたりで積乱雲が発達し、夕方に掛けて雲が北上。東京都、千葉県北西部・埼玉県南部・茨城県南西部・栃木県南部で一時強い雨が降りました。

雷雲

2011年7月1日、茨城県南西部を縦断するかたちで雲が北上。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

夕方になり茨城筑西市周辺にも雨雲が流れてきました。衰退期の積乱雲にありがちな下降気流を伴い、冷たい強風で何度も帽子を飛ばされそうになりました。16時~18時の2時間で気温が約6度下がり、その間に風向きも東から南南西に変わっています。雨雲の通過前後で、90度以上風向きが変わったことになります。

*冷気外出流・・・成熟、衰退期の積乱雲から噴出す冷気(下降気流)。地表に衝突し放射状に流れる。



不気味な雲が垂れ込める中、ひたすらシャッターを切り続けます。普段から悪天候の写真を撮り慣れているとは言え、遮蔽物がない場所での撮影は緊張します。撮影時に怖いのは、何と言っても落雷です。直撃をくらったらひとたまりもありません。要注意です。

対流雲

20011年7月1日、発達した対流雲により、ただならぬ雰囲気に。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

この日、関東~九州で気温が上昇、東北地方から梅雨前線が南下、南からは暖湿流、上空には寒気、大気の状態が非常に不安定で、対流雲の発達しやすい条件が揃っていました。

*暖湿流、暖湿気流・・・暖かく湿った空気。周辺の空気よりも高温多湿。
*対流雲・・・大気の状態が不安定な時に発生する雲の塊、積雲、積乱雲。



撮影開始時に比べ、気温が下がってきました。上空では風が巻いている様で、雲の流れが不安定です。気圧が急激に下がっているのか、耳の奥に微妙な違和感を感じました。

対流雲

2011年7月1日、雲底がこぶ状に盛り上がり、渦を巻き出す。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

上に掲載した写真の様に、あちこちでこぶ状に盛り上がった雲底が、ゆっくりと渦を巻き出しました。この時点でまだ雨は降っておらず、時々遠雷の音が聞こえる程度でした。



ポツリポツリと雨が落ちてきました。レンズに雨粒が付かない様、レンズクロスで拭きながら撮影します。悪条件の中で撮影するため、機材メンテナンスは欠かせません。ひと夏でマウントに錆が出ることも。

漏斗雲

2011年7月1日、地上に向かってのびるて来る漏斗雲。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

3枚目の写真を撮った数十秒後に、地上に向かって漏斗雲がのびてくる様子を確認しました。ゆっくりと回転を伴いながらのびてくる様に一瞬身構えましたが、程なくして消滅しました。一時強い雨が降りましたが、その後雲の勢いは衰え、何事もなかったように静かな夜になりました。

*関連記事 「ゲリラ豪雨」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/15/
*関連記事 「漏斗雲 - Funnel Cloud」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/6/

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

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