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The Storm Chaser

  

2013年6月22日の追跡

2013年6月22日、上空に流れ込んだ寒気と日射による昇温の影響で、北関東を中心に不安定な空模様になりました。昼前から栃木県北部で積乱雲が発達、午後になって雲が広範囲に広がり、四方八方どこを見ても積乱雲という状態になりました。14時46分から15時02分に掛けて、栃木県、群馬県、茨城県、千葉県、埼玉県に、竜巻注意情報が発表されました。

当日、塔状雲が見え始めた11時過ぎから追跡開始、栃木県と茨城県の県境を跨いで、5時間に渡り2つの積乱雲を追跡しました。栃木県小山市で撮影を開始して間もなく、北西方向より遠雷が聞こえて来ました。低く垂れ込める積乱雲に、周囲の積雲が次々に吸収されていきます。バタバタと音を立てて大粒の雨が落ちてきたところで、雲の進行方向である南東方向へ移動しました。県境を超えて茨城県に入った頃には雨は本降りに、雨のエリアを突き抜けた先で積乱雲を待ち構えます。

土砂降りの中で撮影していたところ、カメラにトラブルが発生、オートフォーカス(以下AF)が不動になってしまいました。カメラまたはレンズへの水滴の混入と思われます。シャッターは切れるので、フォーカスをマニュアルに切り替えて撮影を続行しました。その後、不安定ながらAFが動作するようになってきたので、自然乾燥および接点の清掃で元に戻ると思われます。3月の風塵撮影でもAFの動作不良が発生しているため、撮影後のメンテナンスは欠かせません。

積雲

積乱雲

降水雲

積乱雲

rain foot

寒気の流入は、積乱雲が発達する原因の代表格だ。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

最初の積乱雲が通過した後、すぐに後続の積乱雲が近付いて来ました。この積乱雲が圧巻でした。雲の接近とともにアーチ雲の形が明瞭になり、アーチ雲の雲底には回転するウォールクラウド、無降水域にはビーバーテイル、降水域にはテイルクラウド、雲底のあちこちで尾流雲が地上に向かって伸びています。この後、冷気外出流による吹き下ろしの冷風を感じ、ただならぬ雰囲気になったところで防災無線が鳴りました。竜巻注意情報の発表です。一気に緊張感が高まりますが、竜巻やダウンバーストなどの突風は発生しませんでした。この後、日没頃まで雨が続き、19時過ぎには層積雲の隙間に月が見えました。嵐の収束を知らせる合図です。

壁雲

ビーバーテイル

アーチ雲

壁雲

アーチ雲

久々に、北関東スーパーセルを捉えることが出来た。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

当日、東に台風4号から変わった低気圧があり、北関東を通過した寒気トラフとの相互作用で次々に小規模な雷雲が発生したと思われます。突風による被害はなかったようで、梅雨に入ってから少雨傾向の関東内陸部には、いいお湿りだったと思います(茨城県南部で降雹)。



当日のムービー。16倍速表示で雲の流れを映している。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

ムービー後半、防災無線による竜巻注意情報発表のシーンが映っていますが、風切り音に掻き消されて聞き取りづらい状態です。そろそろ外部マイクの導入を考えたほうが良さそうです。

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

可視化した温暖前線

回転する上昇気流域、メソサイクロンを伴う単一セルの積乱雲をスーパーセルと呼びます。単一セル内に上昇気流と下降気流、独立した二つの循環系を持つため効率よく対流が行われ、凄まじいパワーと持続性を兼ね備えています。

降水域(下降気流域)と無降水域(上昇気流域)の境目には温度差で発生する壁雲(ウォールクラウド)が地上に向かって降りてきます。壁雲は舞台と客席を仕切る幕のように垂れ下がり、反時計回りの回転を伴います。高湿度の条件下では、壁雲から降水域(下降気流域)に向かって伸びるテーパー状の雲、テイルクラウドが発生することがあります。テイルクラウドの発生は気流の乱れを表すものであり、断片雲が激しく上下動を繰り返す場合、突風などの激しい現象が発生する恐れがあります(2011年7月5日、茨城県西部で撮影)。

スーパーセル

図解スーパーセル

降水域に伸びるテーパー状の雲がテイルクラウドだ。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

冷気外出流により、局地的に現れる寒冷前線(ガストフロント)が可視化することはよくありますが、ごく稀に、壁雲の上から無降水域(上昇気流域)に向かって、水平方向に伸びる雲列が見られることがあります。ビーバーテイル(Beaver('s) Tail / ビーバーの尻尾)と呼ばれる雲で、局地的な温暖前線が可視化した姿です。竜巻や漏斗雲以上に珍しい現象で、私もこれほど鮮明に現れたビーバーテイルは、一度しか見たことがありません。なお、ビーバーテイルはストームチェイサーのスラングであり、気象用語ではありませんのでご注意下さい。

ビーバーテイル

図解ビーバーテイル

画面奥から右側に伸びているのがビーバーテイルだ。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

雨引山を覆う層雲

2013年6月12日、台風3号の影響で東寄りの湿った風が吹き、雨引山にモーニンググローリーのような層雲が現れました。雨引山(あまびきさん)は茨城県中西部の桜川市にあり、八溝山地の南端に位置する409.3mの山です。八溝山地南端の筑波連山は1000m以下の山が南北に連なっており、東寄り(太平洋から)の湿った風が入ると、山の東側に雲のダムができ、ダムが一杯になると山頂を越えて西側の斜面に流れてきます。いわば東から流れてくる低層雲をブロックする堤防のようなものです。そのため、山の東側では雨、西側では晴れ、そんなシーンが度々見られます。

山沿いで見られる横長の層雲は、山かつら、大蛇雲(おろちぐも)とも呼ばれています。どちらかと言えば降雨時に見られることが多いため、青空バックはレアだと思います。実際、撮影時も直前まで雨が降っており、急速に回復して青空が見えたと思ったら、数時間後には再び雨が降りだしました。ちなみに、モーニンググローリーはロール状の層積雲で、写真の層雲とは別物です。

山かつら

大蛇雲

層雲パノラマ

雨引山を覆う、モーニンググローリーのような層雲。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

雨引山は読んで字のごとく、雨と深い関わりを持っています。821年(平安時代)に大干ばつに見舞われた日本、時の嵯峨天皇が山の中腹にある楽法寺(587年開山)で祈祷をしたところ、見事に成就されたそうで、山号を雨引山と定め勅額をくだし賜った、そんないわれがあります。

*関連リンク・・・「雨引観音 公式サイト」http://www.amabiki.or.jp/(外部リンク)

霧雲

層雲

雨引山の中腹にある楽法寺より、桜川市方面を望む。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

山の中腹に位置する楽法寺まで登ってみました。頭上を勢い良く層雲が流れていきます。層雲の雲底とほぼ同じ高さだったため、ギリギリで桜川市方面が見えました。これ以上登ってしまうと霧の中に入ってしまい、何も見えなくなってしまいます。現在、楽法寺では紫陽花祭が開催されていますが、まだ開花したばかりで、見頃は1週間くらい先になりそうです。期間中はライトアップされるそうで、夜の紫陽花も一興ですね。

*関連記事・・・「北東気流と風返し」http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/87/

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

写真家・青木豊

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