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The Storm Chaser

  
カテゴリー「追跡レポート」の記事一覧

2011年7月15日の月光環

2011年7月15日、20時半頃のことです。ふと窓の外を見ると月が赤い、外に出て月を見上げてみると、ぼんやりと光の環で出ています。もしやと思い、三脚にカメラをセット、見ている間に光の環がハッキリしてきて、月光環になりました。光環(コロナ)自体は珍しい現象ではありませんが、タイミング良く満月と重なることは稀です。やはり、写真的にはまん丸お月様の方がムードがありますからね。

月光環

2011年7月15日、僅か5分程度で消えてしまった月光環。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

光環は太陽や月にうす雲が掛かった時に現れる光の環で、光の回析(回り込み)により現れます。春先の風が強い日、スギ花粉や黄砂が大量に飛散している時にも、同じ様な現象が起こります。太陽に現れる環を日光環、月に現れる環を月光環と言います。暈(ハロ)とは似て非なるもので、暈は光の屈折(折れ曲がる)、光環は光の回析です。

日光環の場合、同じ光の回折で現れる彩雲が同時に見られることも多々あります。彩雲は太陽の近くを通る雲が、赤・緑・紫などに色付く現象であり、古くから吉兆とされています。



実はこの月光環、デジタルカメラが最も苦手とする被写体のひとつです。光環部分の微妙なグラデーションがなかなか綺麗に出ず、輪郭が変に浮き出てしまったり、月の色を綺麗にと思うと光環が目立たず、光環の色を綺麗にと思うと月が色飛びしてしまいます。両立するにはダイナミックレンジを拡張する以外に方法はありません。幸い、2~3年以内に発売されたデジタル一眼レフならダイナミックレンジ拡張機能が付いています。RAW現像時にダイナミックレンジを拡張しても同様の結果が得られます(JPGはダメ)。

これまでHDR処理をするには、露出を変えた複数枚の画像を合成する必要がありましたが、月は約4分で直径分の距離を移動します。複数枚を撮影しようと思うと当然ズレが生じてしまいます。ワタシが愛用しているSILKYPIX Developer Studio Pro5なら、1枚の画像でHDR処理が可能です。気象・局地現象は常に動いている上、短時間に終息してしまうことがほとんどで、撮影中に細部を気にしている余裕はありません。RAWで撮って、後処理するのが常套手段です。

SILKYPIX Official Website http://www.isl.co.jp/SILKYPIX/japanese/

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

2011年7月5日の追跡

2011年7月5日、オホーツク海にある低気圧から伸びる前線の影響で大気の状態が不安定でした。新潟県燕市では、午前9時20分頃にガストフロントによる突風が発生し、負傷者が出ています。新潟県三条市では、午前9時30分頃にダウンバーストによる突風が発生しています。

地元、茨城県西部では朝から晴れて気温が上がりました。午後から栃木県中南部で積乱雲が発達し、15時頃に掛けて茨城県西部にも雲が掛かってきました。雨雲通過時には下降気流が発生したようで、地面に叩きつけるような大粒の雨が落ちてきました。短時間で通過していきましたが、通過時は雷を伴い、一時的に風が強まりました。

wallcloud

2011年7月5日、積乱雲の雲底にWall Cloudが形成された。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

雨雲通過前の風向きは南、雨雲通過中は北西、雨雲通過後は北東に変わっています。筑西市のアメダス状況、14時/32.4℃/南2m/s、15時/24.8℃/北西6m/s、16時/27.9℃/北東3m/s。当日、筑西市では雷注意報、大雨注意報が出ていました。



積乱雲の雲底に付随するWall Cloud、そこから地上に向かってのびるTail Cloudが形成されました。Wall Cloudは上昇気流と下降気流の境界付近に形成され、地上に向かって降りてきます。上昇気流が下降気流の冷気に触れて形成されるため、Wall Cloudが長時間持続すような場合、下降気流が持続している証拠であり、降雹やダウンバーストを警戒する必要があります。

スーパーセル

2011年7月5日、降水域に向かってのびている雲がTail Cloud。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

*Wall Cloud(ウォールクラウド)、Tail Cloud(テイルクラウド)、発達した積乱雲の雲底に形成される。



Wall Coludは無降水域と降水域の境界でもあり、画面左側は無降水域、右側は降水域になります。Tail CloudはWall Cloudの延長で、降水域に向かってのびていきます。Tail Cloud周辺で断片雲が上下動を繰り返している場合、気流が乱れている可能性があります。竜巻やダウンバーストなど、突風に対する警戒が必要です。

tailcloud

2011年7月5日、Wall CloudとTail Croud、無降水域と降水域。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

*関連記事 「ゲリラ豪雨」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/15/
*関連記事 「スーパーセル - Supercell」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/13/

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

2011年7月1日の追跡

2011年7月1日、暖かく湿った空気の流入で、全国的に大気の状態が不安定になりました。前日に引き続き、関東・東北南部・甲信・東海地方では午後から局地的な雷雨が発生しています。15時前後から、東京・千葉・埼玉が隣接するあたりで積乱雲が発達し、夕方に掛けて雲が北上。東京都、千葉県北西部・埼玉県南部・茨城県南西部・栃木県南部で一時強い雨が降りました。

雷雲

2011年7月1日、茨城県南西部を縦断するかたちで雲が北上。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

夕方になり茨城筑西市周辺にも雨雲が流れてきました。衰退期の積乱雲にありがちな下降気流を伴い、冷たい強風で何度も帽子を飛ばされそうになりました。16時~18時の2時間で気温が約6度下がり、その間に風向きも東から南南西に変わっています。雨雲の通過前後で、90度以上風向きが変わったことになります。

*冷気外出流・・・成熟、衰退期の積乱雲から噴出す冷気(下降気流)。地表に衝突し放射状に流れる。



不気味な雲が垂れ込める中、ひたすらシャッターを切り続けます。普段から悪天候の写真を撮り慣れているとは言え、遮蔽物がない場所での撮影は緊張します。撮影時に怖いのは、何と言っても落雷です。直撃をくらったらひとたまりもありません。要注意です。

対流雲

20011年7月1日、発達した対流雲により、ただならぬ雰囲気に。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

この日、関東~九州で気温が上昇、東北地方から梅雨前線が南下、南からは暖湿流、上空には寒気、大気の状態が非常に不安定で、対流雲の発達しやすい条件が揃っていました。

*暖湿流、暖湿気流・・・暖かく湿った空気。周辺の空気よりも高温多湿。
*対流雲・・・大気の状態が不安定な時に発生する雲の塊、積雲、積乱雲。



撮影開始時に比べ、気温が下がってきました。上空では風が巻いている様で、雲の流れが不安定です。気圧が急激に下がっているのか、耳の奥に微妙な違和感を感じました。

対流雲

2011年7月1日、雲底がこぶ状に盛り上がり、渦を巻き出す。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

上に掲載した写真の様に、あちこちでこぶ状に盛り上がった雲底が、ゆっくりと渦を巻き出しました。この時点でまだ雨は降っておらず、時々遠雷の音が聞こえる程度でした。



ポツリポツリと雨が落ちてきました。レンズに雨粒が付かない様、レンズクロスで拭きながら撮影します。悪条件の中で撮影するため、機材メンテナンスは欠かせません。ひと夏でマウントに錆が出ることも。

漏斗雲

2011年7月1日、地上に向かってのびるて来る漏斗雲。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

3枚目の写真を撮った数十秒後に、地上に向かって漏斗雲がのびてくる様子を確認しました。ゆっくりと回転を伴いながらのびてくる様に一瞬身構えましたが、程なくして消滅しました。一時強い雨が降りましたが、その後雲の勢いは衰え、何事もなかったように静かな夜になりました。

*関連記事 「ゲリラ豪雨」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/15/
*関連記事 「漏斗雲 - Funnel Cloud」 http://tornado.blog.shinobi.jp/Entry/6/

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

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