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Lightning Photography - 雷撮影

(注)雷撮影には危険が伴います。安全面に十分注意し、自己責任で撮影を行なってください。
この記事を元にした行為により生じた損害など、執筆者は一切の責任を負わないものとします。

雷撮影

自動車内に三脚を立て、雷を撮影している様子。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

当サイトの検索ワード上位に、雷撮影・雷の撮り方・稲妻の撮り方、があります。雷を撮影してみたいけど撮り方がわからない、雷は怖いけど撮影してみたい、そんな方々のために雷撮影の基本をお教えします。当記事はあくまで基本的なことであり、すべての条件には当てはまりませんので、その点はご理解いただきたいと思います。

重要なのは、連写中に偶然写ったではなく、狙って撮ることです。雷は狙って撮れるのです。気象データから撮影ポイントを割り出し、車で先回りして雷雲を待ち構えます。雷雲の真っ只中では危険が伴い撮影になりませんので、少し離れた場所で雷雲を待ち構え、ヒット・アンド・アウェイで移動を繰り返します。雷雲は常に動いていますので、一ヶ所で粘っても好結果は得られません。結果を求めるなら車で雷雲を追跡しながら撮影、安全性を求めるなら丈夫な建物の中から撮影するといいでしょう。何れにしても集中力を要しますので、集中が切れたらその時点で撮影は終了します。集中が切れると冷静な判断ができなくなり、身を危険にさらすことになります。



第1章・雷撮影の基本

雷の撮影方法は時間帯により異なります。早朝夕方、薄明の時間帯はスローシャッター(1/15~1/60秒程度)、日中、明るい時間帯は周りの明るさに稲妻が相殺されてしまうため高速シャッター(1/125秒以上)、夜間、完全に日が落ちた状態ではバルブで撮影します。

早朝夕方、日中はバルブが使えませんので、動体視力と反射神経の勝負になります。稲妻が光る瞬間、ほぼ同時にシャッターを切らなければ写りませんので、全神経を集中して、反射的に指先が動くまで練習を重ねます。地上に落ちる雷は、スローで見ると雲と地上を何度か往復しています。場合によっては多少遅れても写ることがありますので、あきらめずに何度も挑戦して下さい。ただ闇雲に連写をしても効率が悪いだけですので、狙って撮るようにしましょう。また、明るい時間帯にNDフィルターを使用し、スローシャッターを切ってもあまり意味が無いことを覚えておいてください。明るい時間帯は露光時間が長くなるほど、周りの明るさに相殺される確率が高くなります。

夜間は比較的簡単で、花火と同じ要領で撮影します(バルブ撮影)。三脚とリモートコードが必須アイテムです。絞りは開放からF8まで、それ以上はNDフィルターで調整します。雷雲に(雷が光る方に)向けてカメラをセットし、画面内に雷が入ったら1~3秒後にシャッターを閉じます。雷が入らなかった場合は60秒を上限にシャッターを切り直します。また、ノイズリダクションをオフにしないと、処理に時間が掛かり撮り逃しが多くなる上、バッテリーの消耗も速くなります。



第2章・雷撮影の設定

昼夜を問わずピントはMFで置きピンにします。数100m先の鉄塔などにピントを合わせるといいでしょう。AFの場合はピントが抜けることがありますので、予めMFにしておいた方が間違いありません。不意にピントリングが動かないように、パーマセルなどで固定しておくと安心です。

WB(ホワイトバランス)はオートが基本ですが、好みで選んでも全く問題ありません。背後に街灯がある場合、空が茶褐色に転ぶことがあります。その時はWBを電球にセットすることで色かぶりが抑えられます。稲妻の周辺がマゼンタ(赤紫)かぶりを起こすことがありますが、これは稲妻が発する赤外線の影響です。気になる場合はRAWで撮影し、後処理で調整するといいでしょう。

撮影感度(ISO)は必ずしも最低感度が良いとは限りません。夜間、バルブ撮影の際には最低感度の方がノイズも目立たず綺麗に撮れますが、薄明の時間帯や日中は、その時間帯に合ったシャッター速度があり、シャッター速度を最優先に考えて感度を設定する必要があります。

カメラは、マニュアル露出、マニュアルフォーカスが使えれば、一眼レフでもコンパクトデジカメでも、どちらでもOKです。オート露出専用のデジカメでも撮れないことはありませんが、設定の自由度が限られる分、撮影し辛くなることをご理解ください。

レンズはお好みで構いません。標準ズームが最も適していますが、ワタシの場合は広角から中望遠まで幅広く使います。雨や雹が降る中で撮影することも多いため、レンズ保護フィルターとレンズフードは必需品です。雨粒が直接レンズに付いてしまうと、コーティングに跡が残ったり汚れの原因になることがあります。超広角レンズを使えば画面内に収まる確率は高くなりますが、広い画角に一杯にとらえようと思うと、雷に近付かなければなりません。雷に近付くことは身を危険にさらすことになるため、それなりの覚悟が必要になることを覚えておいてください。



第3章・雷撮影の注意点

雷の発する電圧は数千万ボルトから二億ボルトと言われています。撮影中、雷の直撃を食らったら命はないと思ってください。高所や遮蔽物のない場所は非常に危険ですし、東屋など壁のない建物や木の近くは側撃雷(直撃雷の二次的放電・再放電)の危険性があります。安全に撮影するには、丈夫な建物や車の中などが適しています。ワタシの場合は車の中から撮影することが多いですが、100%安全とは言い切れません。窓を開けていたり金属部分に触れていたりすると、車内でも感電の恐れがあります。とにかく危ないと思ったらすぐにその場を離れること、一度の撮影で欲張らず、冷静に状況を判断しましょう。

突風や雹にも注意が必要です。突然風向きが変わる、気温が急降下する、大粒の雨や雹が降ってくる時は突風の前触れです。また、最大瞬間風速が20m/sを超えると、三脚はあっけなく倒れてしまいます。重めのウエイトを使用するか、何かに固定しておく工夫が必要になります。



第4章・雷写真の作例

落雷

薄明の時間帯、ISO400 F3.2 1/30秒 35nn換算30mm相当。トリミング無し。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

落雷

明るい時間帯、ISO160 F5.6 1/200秒 35mm換算36mm相当。トリミング無し。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

落雷

明るい時間帯、ISO400 F11 1/250秒 35mm換算34mm相当。トリミング無し。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

雲間雷

夜間のバルブ撮影、ISO100 F8 38秒 35mm換算42mm相当。トリミング無し。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

防災気象情報を活用

気象庁のレーダー・ナウキャストをご存知でしょうか?気象庁のレーダーによる観測データ、降水量、雷活動度、竜巻発生確度を5分毎に表示する防災気象情報です。降水量は8段階に色分けされており、赤が濃くなるほど降水強度が高くなります。雷活動度は4段階に色分けされており、紫が活動度が最も高い状態になります。竜巻発生確度は2段階に色分けされており、黄は発生確度1、赤は発生確度2、発生確度2になると竜巻注意情報が発表されます。レーダー・ナウキャストと共に、気象警報・注意報、気象情報の項目もチェックしておくといいでしょう。

対地雷

雷活動度4になると激しい落雷が発生する。不要な外出は避け、建物内・自動車内などに避難しよう。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

レーダー・ナウキャストはリアルタイム表示ではないのである程度の誤差は生じますが、慣れてくると降り出しのタイミングや、強雨域の分布による局地現象の予測等も可能になります(あくまで予測であり、100%ではありません)。ネットが使える環境があれば誰でも無料で利用できるので、使わない手はありません。気象災害に対しては、自分の身は自分で守るが鉄則です。

*気象庁 http://www.jma.go.jp/jma/index.html(外部リンク)

気象庁ホームページ上部にある、防災気象情報のタブをクリックすると、各種情報ページのリンクが表示されます。上手に利用して、気象災害から身を守りましょう。

アーチ雲

アーチ雲から地上にのびるテイルクラウド。ラインエコーが出るとこの様な現象が発生しやすい。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

ガストフロント

ガストフロント発生によりアーチ雲が形成された。ボウエコーが出るとこの様な現象が発生しやすい。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

メソサイクロン

ガストフロントを伴う気流の渦、メソサイクロン。フックエコーが出るとこの様な現象が発生しやすい。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

*ラインエコー・・・強雨域が線状に分布する状態。前線上に見られることが多い。
*ボウエコー・・・強雨域が弓状に分布する状態。複数の降水セルが一体化した時に見られる。
*フックエコー・・・強雨域が鈎状に分布する状態。メソサイクロンにより回転を伴う。

メソサイクロンとは、積乱雲に発生する直径数Kmの小規模な低気圧、上昇気流を伴う気流の渦・循環のこと。コリオリの力の影響で、北半球では反時計回りに、南半球では時計回りに回転します。竜巻発生の要因のひとつと言われていますが、諸説あり完全に解明されていません。

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

地震雲は俗説

地震雲には科学的根拠は無く、時としてデマの元になる俗説です。阪神大震災以降にマスメディアを中心に広まり、勝手な解釈で一人歩きしてしまいました。目撃情報のほとんどは後から付け加えられたものであり、信憑性に乏しいものばかりです。地震雲と呼ばれる雲には、放射状に広がる雲、帯状にのびる雲、竜巻状の雲などがあります。写真等で検証してみると、そのほとんどは巻雲(けんうん)か飛行機雲の形が崩れたものでした。また、肯定派から断層雲と呼ばれる雲は、そのほとんどが夕日に染まる層積雲です。テレビの情報番組等で特集が組まれ、大げさな効果音とともに、もっともらしい解説をしているため、騙されてしまう人が多いようです。少しでも気象学をかじっている人が見れば、すぐに嘘だとバレてしまうようなお粗末な内容です。

*地震雲は俗名であり、気象学的な定義はありません。国際雲図帳にも分類されていません。

層積雲

2010年7月12日 梅雨の晴れ間、夕日に染まる層積雲。© Yutaka Aoki. All rights reserved.



大手検索サイトより「地震雲」で画像検索をした結果、巻雲(すじ雲)、巻積雲(うろこ雲)、飛行機雲、層積雲、レンズ雲(つるし雲)、高積雲(ひつじ雲)、波状雲など、気象好きから見れば特に珍しくない雲ばかりが表示されました。上記の雲は時に奇妙な形を形成することがあり、見た目から悪い印象を受けたのかもしれません。また、垂直の光芒「太陽柱・月柱」を、地震に関連する発光現象と力説されている方もいるようです。太陽柱・月柱は大気光学現象のひとつであり、こちらも地震との因果関係は証明されていません。揺れの最中に起こる発光現象は、送電設備の破損による発光である可能性も指摘されています。

高積雲

2008年9月23日 秋の夕暮れ時、帯状にのびる高積雲。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

肯定派の方々は雲の形だけで判断しており、当日の気象条件と照らし合わせることをしていません。雲の発生には必ず気象的な要因があり、地震と関連付けるには無理があります。偶然の一致があったとしても、科学的根拠が無ければそれを証明することは出来ないのです。結論として、地震雲は噂の一人歩き、思い込みや恐怖心が作り出した俗説と考えています。毎日どこかで地震が発生している地震大国日本ですから、こじつけ話を作りやすい環境と言えます。雲で地震を予知出来るなら、関係省庁も苦労しませんよ。



*予知、予測に関して、科学的根拠があるものをいくつか挙げておきます。

・太陽に暈が掛かると雨・・・巻雲、巻層雲は低気圧の接近に伴い発生する。
・山に笠雲が掛かると風・・・低気圧・前線からの風が山の斜面に当たって雲が形成される。
・夕焼けの翌日は晴れ・・・日本の天気は、偏西風により西から東に移動する。
・遠くの音が良く聞こえると雨・・・湿度が高いと音の伝達速度が速くなるため、良く聞こえる。

幻日

2010年7月18日、巻雲と幻日、太陽光の屈折により現れる。© Yutaka Aoki. All rights reserved.

*2011年現在、特定の雲の出現と地震発生の因果関係は証明されていません。
*公的機関での研究も進んでおらず、裏を返せば研究に値しないテーマと言えるでしょう。
*地震雲は、都市伝説やオカルト信仰の類であり、悪徳商法にも利用される悪しき俗説です。

*当サイト内で使用している写真は全て管理人自身による撮影です。写真の無断転用は厳禁です。

写真家・青木豊

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