雲底に現れる、奇妙なコブ状の雲を見たことがあるでしょうか?気流が乱れている時に現れる乳房雲(ちぶさぐも/英:Mammatus)です。コブの中には雨や雹が蓄えられており、強い下降気流が発生している証拠でもあります。独特の形状は気流の衝突によって形成されており、雲の中に発生した下降気流が上昇気流の力で持ち上げられている状態、今にもこぼれ落ちそうな滴(下降気流)を下から支えている(上昇気流)と思ってください。下降気流が上昇気流の力を上回り、支えきれなくなったところでコブの形が崩れ、雨や雹が一気に落ちてきます。
アメリカでは「低い位置に現れる乳房雲を見たら丈夫な建物に避難しろ!」と言われるくらい、危険な雲として認識されています。乳房雲が発達して漏斗雲に成長することもあり、竜巻の前兆として恐れられています。日本でも乳房雲の出現は荒天の前触れとされています。大雨、雹、雷、突風などが発生する恐れがあります。
寒気を伴う低気圧の通過時に現れた、層積雲の乳房雲。© Yutaka Aoki. All rights reserved.
雲頂が垂直に立ち上がる雲が現れることがあります。上空に強い寒気が入り、大気の状態が不安定になった時に現れる塔状雲(とうじょううん/英:Castellanus)です。垂直に立ち上がる形状は上昇気流によって形成され、層積雲や積雲に見られた場合、短時間の間に荒天をもたらします。上空の冷たい空気は密度が高いため重く、地上へ下りてきます。一方、地上付近の暖かい空気は膨張して軽くなり、上へ上へと上昇します。異なる性質の空気がぶつかるところで対流(循環/流れ)が発生し、雨雲を発達させます。その過程で形成される雲が塔状雲です。
発達した積乱雲の降水域と無降水域の境には、ガストフロントによるアーチ雲や塔状雲が見られることが多々あります。それらの雲が通過した後、天気が急変し大荒れになります。アーチ雲と同様に、塔状雲も発達した積乱雲に先駆けてやってくる雲と認識していいと思います。
積乱雲の横に現れた塔状雲、大気の状態が不安定な証拠。© Yutaka Aoki. All rights reserved.
積乱雲が発達して鉄床(かなとこ)状になると、雲頂部に毛羽立ったような雲、多毛雲(たもううん/英:Capillatus)が現れることがあります。発達を続ける積乱雲が対流圏界面に達すると、複雑な気流や強風の影響のより、雲頂部分が毛羽立ったような雲が形成されます。この状態は、対流圏界面に達してもなお成長を続けている証拠であり、スーパーセルに良く見られる特徴です。このような雲が通過する際には、豪雨、雹、雷、竜巻などの突風が発生することが多くなります。見た目にも迫力があり、空の王者に相応しい威風堂々とした姿です。
通常、積乱雲の寿命は30分~1時間程度ですが、多毛雲が見られるまでに発達すると、2時間近くも勢力を維持することがあります。激しい現象が長時間続くため、道路の冠水や落雷による停電などを引き起こします。直撃されたらなす術がなく、通りすぎるのを待つしかありません。
雲頂には多毛雲が、かなとこの左下には塔状雲が見える。© Yutaka Aoki. All rights reserved.
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